胆石症の原因・症状・リスク・検査・治療について
近年、日本の食生活の欧米化によって増えているのが胆石症です。その患者数は10人に1人とも言われ、無症状のまま進行し、深刻な状態になって発見されるというケースもあります。そうならないためにも多くの方に胆石症について知っていただきたいと思います。今回は胆石症の症状、検査、治療、予防について詳しく説明させていただきます。
胆石症とは
胆石症は、胆汁の流れる胆道に石ができてしまう病気の総称です。つまり、肝臓でつくられた消化液(胆汁)を十二指腸まで運ぶ胆管や胆嚢に結石ができる病気の事を言います。結石ができる場所によって、肝内結石、胆管結石、胆嚢結石に分類されます。胆石症は食生活の欧米化や高齢化などにより、近年増加傾向にあります。また、男性に比べ女性に多い傾向にあり、罹患率は女性が男性の2倍とも言われています。
胆道の働き
肝臓から十二指腸まで胆汁を運ぶ胆道は肝内胆管、胆管(肝外胆管)、胆嚢に分けられます。肝臓で作られた胆汁は、胆嚢に蓄えられ濃縮されます。食べ物を摂取すると、胆嚢が収縮して胆汁が分泌されます。胆汁は胆管を通って十二指腸に流れこみ、消化吸収を助ける働きや 肝臓で処理された不要物を排泄する役割があります。
胆石症の種類と石の種類
胆石症は結石ができる場所によって、肝内結石、胆管結石、胆嚢結石に分類されます。胆嚢結石が約80%ともっとも多く、胆管結石は約20%、肝内結石は約2%と言われています。
次に石の種類ですが、コレステロールが主成分の「コレステロール石」とビリルビンが主成分の「色素石」に大別され、色素石は「ビリルビンカルシウム石」と「黒色石」があります。日本人の胆石症患者さんの80%ほどがコレステロール石と言われています。その他、稀な石として白い石の報告もあります。
胆石ができる原因
胆石ができる主な原因は、食事の内容や細菌感染などによって胆汁に含まれる成分が凝縮され結晶化し、固まってしまうために発生します。代表的な原因を下記に紹介していきます。
高脂肪の食事
脂肪分の多い食事を習慣的に摂っていると、コレステロールを多く含んだ胆汁が作られます。そしてそのコレステロールが濃縮され、結晶化して胆石ができやすくなります。
細菌感染
細菌感染が起きると、胆管や胆嚢に炎症を起こして胆汁が停滞し、胆石が形成される可能性があります。また、胆汁に含まれるビリルビンが細菌によって変化して黒色胆石が形成されることもあります。
遺伝的要因
胆石は遺伝的要因があると言われていますが、胆石そのものが遺伝するわけではなく、生活習慣や食習慣が影響すると考えられています。
その他
甲状腺ホルモンが減少すると胆石になりやすい傾向にあるとの報告があります。また、慢性的なカルシウム不足があると副甲状腺ホルモンが分泌され、骨からカルシウムが遊離され、そのカルシウムが胆石の成分となるのではないかとも言われています。
胆石症の症状
胆石症でも2~3割の患者さんは、無症状胆石といって自覚症状がありません。しかし、多くの場合、胆石症になると胆道痛という特徴的な痛みが現れます。一般的に胆道痛は右の肋骨の下やみぞおちに痛みが現れますが、放散痛といって痛みが少し離れた場所に起きることもあり、右肩に放散痛がみられるケースもあります。
また、胆道痛は食後に出ることが多いことが特徴としてあげられます。
症状が悪化すると
通常、胆汁は胆管を通り、十二指腸に入り、最後は便に混じって排泄されますが、胆石によって胆汁の流れがせき止められると、十二指腸に流れ込むことができず、ビリルビンが体内に蓄積されて黄疸の症状が出てきます。皮膚や白目が黄色くなったり、皮膚に痒みが出たり、ビリルビン尿という褐色~黒色の尿が出ることがあります。
胆石が胆嚢や胆管を傷つけ、炎症が起きると急性胆嚢炎や急性胆管炎を起こし、激しい腹痛や嘔吐や高熱が出ることもあります。
急性胆嚢炎や急性胆管炎を発症した方の9割以上が胆石が原因と言われています。胆石が胆管に詰まり、細菌感染を起こしたり、膵液が胆嚢に逆流することで炎症が起こると考えられます。詰まった胆石により胆管内の圧が高まるため、感染した細菌が容易に血液中に逆流してしまいます。その場合、敗血症を引き起こして、最悪の場合には多臓器不全に陥り、死に至ることもあります。
胆石症のリスクと予防
胆石症のリスク
中年以降に多く発症するため加齢が一つのリスクになります。胆石症は、男性より女性の方が2倍多いといわれていますので、40歳代以降で肥満の女性はリスクが高いと言えます。しかし、男女共に肥満や過食、不規則な食生活、ストレスなどの生活習慣が大きく影響します。また、遺伝的な要因も影響すると言われています。
胆石症の予防
加齢は避けることができませんので他のリスクを減らすことが有益です。肥満や過食を避けて、規則正しい食生活、適度な運動を基本とし、ストレスを溜めないような生活を心がけてください。
食事については特に脂肪分やコレステロールの多い食品の過剰摂取は避け、アルコールは適正量を守るようにしましょう。
また、脱水が胆石症のリスクを高めると言われておりますので、適切な量の水分摂取を心がけるようにしてください。
胆石症の検査
血液検査
血液検査をして全身状態の確認をします。胆石があるだけでは血液検査に異常は見られないことがほとんどです。胆嚢炎や胆管炎を起こしている場合には細菌感染や炎症によって白血球や炎症の値(C R P)の増加が認められます。また、胆石が胆管を詰まらせて胆汁の流れが悪くなるとビリルビン値の上昇が起こります。
腹部超音波検査
超音波検査では胆石の有無や大きさを調べることができます。胆管内に結石があり、胆管が拡張している場合も超音波で分かります。
胆石は超音波検査で明瞭に観察することができ、体に害もないため、診断には非常に有用です。
一方で、胆管が細い場合や結石が小さい場合には超音波検査で検出されない事もあるため、疑わしい場合にはその他の検査(C TやM R I)なども検討します。
レントゲン検査
胆石の大きさによって、はっきり映る場合と映らない場合があります。一方で胆石が原因で胆嚢炎や胆管炎を引き起こしている場合には胆嚢や胆管の形状の変化がレントゲンで認められることがあります。そのため、レントゲンは胆石による合併症の診断には有用な検査と言えます。
CT検査
C T検査で胆石の場所、大きさ、形状などを確認することができます。また、結石の成分によってはC T検査で検出できない場合があるので、その場合は他の検査結果を総合的に見て判断します。
DIC-CT
DIC-CTは胆管内に造影剤を注入してからC T検査を行います。そうすることで胆管内部の状態や胆石の位置や大きさなどを正確に評価することができます。DIC-CTは当院では行っておりませんので、必要な場合は提携している検査機関をご紹介させていただきます。
MRI検査
MRI検査で胆石の場所、大きさ、形状などを評価することができます。特にカルシウム含有量が少なく、柔らかい胆石の診断にはM R I検査がC T検査より有用な場合があります。当院ではMRI検査を行なっておりませんので、必要な場合は提携している検査機関をご紹介させていただきます。
胆石症の治療
症状のない胆石症の場合には、治療の必要はありません。定期的に受診し、経過観察を行い、脂肪の多い食事を控えるなどの食事療法を行い、痛みの予防とコントロールをします。
しかし、腹痛などの症状が強い場合には、検査の上、症状に応じて下記の治療を行います。
溶解療法
胆石を溶かす作用がある内服薬を服用し、経過観察を行います。溶解療法は比較的安全で副作用が少ないことがメリットです。一方で薬剤に対する耐性がある胆石には効果がなく、溶解までに時間がかかることがデメリットとして挙げられます。その場合、手術などの他の選択肢がとられることがあります。
体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)
外科手術をせずに体外から衝撃波をあて、他の臓器を傷つけることなく、結石のみを細かく破砕する治療方法です。20mm以上の大きな結石では完全に破砕できないことがあります。また、合併症が起きるリスクもあり、溶解療法を併用する場合があります。
内視鏡的総胆管結石除去法
まず、内視鏡を十二指腸まで挿入して胆管の出口を電気メスで切開して胆汁や膵液の流れを確保します。その次に専用のカテーテルを胆管に挿入して結石を取り出します。
胆嚢摘出術
胆石を含んだ胆嚢ごと摘出する手術です。多くの場合、腹腔鏡下で胆嚢を切除できますが胆嚢に炎症があったり、癒着がある場合には開腹手術を選択する場合があります。胆嚢を切除しても胆汁は流れるため、一般的には生活に支障をきたすほどの症状は現れません。
終わりに
当院では、胆石症や胆嚢炎の検査・診断・治療が可能です。詳しい検査や治療が必要と判断した場合は系列院や提携している医療機関をご紹介させていただきます。胆石症や胆嚢炎は症状がひどくなると手術が必要になり、最悪の場合には命の危険も考えられます。胆石症や胆嚢炎を疑う症状がある方は、お気軽に当院にご相談ください。
名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。