腹痛(お腹の痛み)
お腹の痛みで悩んでいる方は非常に多いと思います。急にくる腹痛で悩んでいる方もいますし、長期間に及びずっとお腹の痛みを抱えている方もいらっしゃいます。お腹の痛みの原因は様々です。泌尿器科的(尿の通り道)な原因、消化器科的(食べ物の通り道)な原因、整形外科的(筋肉や腱や骨)な原因などがあり、原因を特定するには適切な検査と診断が必要です。今回はお腹の痛みの原因とその検査について記事にしてみたので一読していただけると幸いです。
◆目次◆
1 腹痛の原因
2 腹痛の検査
2-1 採血検査
2-2 尿検査
2-3 レントゲン検査
2-4 超音波検査
2-5 胃カメラ検査
2-6 CT検査
3 泌尿器科疾患による腹痛
3-1 尿管結石による腹痛
3-2 膀胱炎による腹痛
4. 消化器疾患(胃や腸)による腹痛
4-1 胃・十二指腸の腹痛
4-2 胆石、胆嚢炎
4-3 膵臓の痛み
4-4 大腸の痛み
5. 整形外科疾患(筋肉、骨、腱)による痛み
6. 婦人科疾患による痛み
7. その他の疾患による痛み
1. 腹痛の原因
腹痛といっても原因は様々あります。胃や腸、胆嚢、膵臓といった消化器系(食べ物の通り道)の疾患からくる痛みや腎臓や尿管、膀胱などの泌尿器科系(おしっこの通り道)の疾患からくるもの、筋肉や骨、腱などの整形外科系の疾患からくる痛みもあります。また女性の場合ですと卵巣や子宮といった婦人科系の疾患からくる痛みやそのほかにも血管、大動脈や動脈からくる痛みなどがあげられます。腹痛の検査項目に続き、それぞれの器官・臓器を原因とする痛みについて解説していきます。
2. 腹痛の検査
2-1 採血検査
採血検査の目的は体の中に感染などの炎症反応がないかをみることです。炎症があると感染による痛みの可能性があります。尿管結石などの疑いがある場合には腎臓の機能が悪化していないか、胆石や胆嚢炎の疑いがある場合には肝臓の機能が悪くなっていないかを確認します。強い腹痛がある時は大抵血液検査で何かしらの異常を示すことが多いです。腹痛がある場合、本人がさほど心配していなくても当院では採血をすすめる場合があります。その採血によって腹痛の原因が判明することがあるからです。また、採血結果は聞きに来て頂かなくても電話で翌日以降お伝えすることも可能です。
2-2 尿検査
尿管結石症など、尿路系、腎尿管膀胱系の痛みがある場合には尿の中に赤血球や白血球が出てくることがあります。泌尿器科系の疾患に尿検査は非常に重要な検査になっております。尿管結石など泌尿器科系の病気を疑った場合は尿検査を行って頂きます。
2-3 レントゲン検査
腸が詰まっていないか、ガスや便が溜まりすぎていないか、尿管結石がないかなどを確認します。レントゲン検査は被曝量も少なく短時間に終えられる簡単な検査のわりに非常に多くの情報が得られる有用な検査です。消化器系、泌尿器科系のクリニックや病院では欠かせないけんさです。
2-4 超音波検査
体にゼリーを塗布して機械をあててみる体に優しい検査です。大動脈にコブができていないか、大動脈が破裂していないか、尿管結石がないか腎臓が腫れていないか、胆石の詰まりや胆嚢が炎症していないかなどをみることができます。また、超音波技師さんの腕次第で虫垂炎(盲腸)かどうかもわかります。超音波検査も体に害がなく簡単な検査で、腹痛の原因を調べるのに非常に有用な検査です。超音波検査も泌尿器系、消化器系のクリニックには欠かせない検査となっております。
2-5胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査
胃や十二指腸が原因と考えられる腹痛の場合には胃カメラ検査も重要です。胃や十二指腸の表面の粘膜は胃カメラでしかわからないので、胃潰瘍や胃アニサキス症、胃がん、十二指腸潰瘍の疑いがあった場合には胃カメラ検査をすることも重要です。当院でも胃カメラ検査を行っておりますので詳しくはこちらをご参照ください。麻酔を使用して苦しまずに胃カメラ検査を行うことも可能です。
2-6 CT検査
レントゲンや超音波の検査をしても腹痛の原因がわからないときにはCT検査を行います。(胃カメラ検査とCTのどちらを優先するかは腹痛の程度や場所から適切な検査を選択します)CT検査を行うことでおおよその腹痛の原因がわかります。ただしCT検査は被曝量が多いためすぐにCT検査をするということはありません。なるべく身体に優しい検査からすすめていきます。胆石や尿管結石や大動脈の異常もCT検査でわかります。造影剤という薬を血管から注入して撮影する造影CTはより高度に詳細な診断ができます。
3.泌尿器科疾患による腹痛
3-1 尿管結石による痛み
尿管結石からくる腹痛は「痛みの王様」と言われるほどものすごい痛みがあります。片方の腹部から腰にかけての痛みがあり、痛みの特徴としては24時間続くことはなく動きや体勢を変えても痛みは変わりません。その方の性格が変わるほどの強い痛みです。(痛みで周囲の方への配慮などが出来なくなってしまいます。翌日にクリニックを受診したら全く別人のように穏やかだった、というのは泌尿器科ではよくあることです)
治療は内視鏡的治療、対外衝撃波、保存的治療などがあります。詳しくはこちらをご参照ください。
尿管結石の予防は水分摂取と規則正しい生活習慣です。
3-2 膀胱炎による腹痛
膀胱炎は稀に下腹部が痛くなることがあります。頻尿感、残尿感、排尿時痛を伴うことが多いです。抗生物質の投与で良くなります。
女性に多く、男性はほとんどかかりません。
膀胱炎の予防は、水分摂取、こまめな排尿、陰部を清潔に保つこと、です。
膀胱炎について詳しくはこちらをご参照ください。
4.消化器疾患(胃や腸)による腹痛
4-1 胃・十二指腸の腹痛
胃・十二指腸の痛みは心窩部に起こり、ピロリ菌が原因で起こることが多いです。ピロリ菌が原因で起こるものには、胃炎、胃十二指腸潰瘍などがあります。また、胃酸が逆流することでも痛みが起こります。胃酸が原因で起こる腹痛は食前食中食後の全てで起こり、明け方に痛むことが多いとされてます。胃十二指腸由来で起こる腹痛の原因として考えられる病名としては逆流性食道炎や慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変、急性胃炎、胃アニサキス症、などがあげられます。治療はピロリ菌の除菌や胃酸を抑える薬を投与します。(胃アニサキス症の場合はアニサキスの除去を試みます)
4-2 胆石、胆嚢炎
胆石や胆嚢炎といった胆嚢による腹痛です。腹痛の特徴は右の肋骨下が痛み、食後に急に起こることが多いです。治療は抗生剤の投与、胆嚢の摘出、総胆管結石の除去といった内視鏡的治療、外科的治療が行われます。胆嚢炎は強い腹痛と発熱を伴い、放っておくと重症化し死に繋がる場合もあります。
4-3膵臓の痛み
膵臓の痛みは膵炎、膵臓癌で起こります。膵炎は主にお酒を多く飲む方にみられます。背中の痛みを伴い、超音波検査で診断できます。急性膵炎は非常に重篤な病気なので、背中の痛みや心臓の痛みなどが同時にあった場合はすぐにクリニックを受診しましょう。膵臓癌は痛みを伴っている時は進行している場合が多く、定期的に健診などで超音波検査を行うことが重要です。
4-4大腸の痛み
主に腸炎によるものが腸の痛みとなります。痛みはお腹全体の時もありますし、下腹部だけに限定する時もあります。大腸による腹痛は下痢を伴うことが多いです。細菌感染による痛みの場合は抗生剤の投与をしますが、ウイルス性の腸炎の場合は対症療法(症状に対してだけの治療)を行います。それ以外は腸炎の原因となった根本的な治療を行います。過敏性腸症候群は長期に渡って下痢やお腹の痛みが続きます。
近年過敏性腸症候群についての病気が解明され一般の方も広く知ることが出来る様になってきました。人口の約10%の方が過敏性腸症候群をもってるとされてまいます。そして自分は過敏性腸症候群なのではないかと疑いクリニックを受診される方が増えております。実際にこの病気で悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
5.整形外科疾患(筋肉、骨、腱)による痛み
整形外科疾患での腹痛は鼠径部や脇腹の痛みが運動後や運動をした翌日以降に起こる人が多いです。この場合の痛みは、起き上がったり捻ったり何かしらの動きを伴って痛くなります。基本的には整形外科的疾患の場合は様子を見ていたら治ることがほとんどですが、「よくある筋肉痛だ」「整形外科的な痛みだ」などと乱暴に言ってしまうのは非常に危険です。重篤な内臓の疾患(泌尿器科疾患や消化器科疾患)がないことを確認した上で除外診断的に整形外科的疾患だと考えるのが一般的に安全な診断の流れです。
6. 婦人科疾患による痛み
卵巣や子宮などの病気による痛みです。卵巣がねじれていたり卵巣に感染があった場合や子宮筋腫などでも腹痛を伴います。強い下腹部痛があった場合はすぐに婦人科専門のクリニックを受診しましょう。
7.その他の疾患による痛み
大動脈破裂ではお腹の中央部、みぞおちからお腹にかけて真ん中の部分が痛みます。大動脈破裂は超音波で簡単に診断可能なのですが、逆に言えば超音波でないとわからない、レントゲンだけではわからない場合がありますです。お腹に強烈な痛みが急に起こって大動脈破裂と診断した際にはほとんどの場合ですぐに手術が必要となります。大動脈破裂を疑った腹痛に対しては必ず超音波検査を行った方が良いでしょう。これを見逃すことで訴訟リスクを抱えるクリニックもあるほどです。ご自身が本当に心配な場合には検査を申し出ましょう。検査を嫌がる先生はいないと思います。検査は過剰にやりすぎるのは医療経済的にもよろしくないですが、心配なときには余分な検査もして万が一に備えることが大事だと思います。ちょっと大袈裟でも万が一の時を考えて検査をしてくれるクリニックが良いクリニックだと私は思います。万が一の場合は命に直結してしまう可能性もあるからです。
現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。
またオンライン診療も行っております。
全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記のリンクか下部のバナーよりご相談下さい。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。