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女性泌尿器の診療について

泌尿器科の受診を必要とされている女性は少なくありません。しかし、泌尿器科というと男性の科、イメージも強く、さらに男性医師に相談することに抵抗があり受診できない女性も多いでしょう。今回は、女性にとっての泌尿器科の診察というテーマで、記事にしました。泌尿器疾患で悩んでいてもなかなか受診に至っていない方に、ぜひ読んでいただきたいと思います。

◆目次◆

1 今女性の泌尿器科が注目されている理由
2 女性がかかる泌尿器科の病気
2.1 膀胱炎
2.2 過活動膀胱
2.3 腹圧性尿失禁
2.4 骨盤臓器脱
3 女性の泌尿器科の病気の検査について
3.1 採血検査
3.2 尿検査
3.3 超音波(エコー)検査
3.4 尿流量検査
4 女性の泌尿器科の病気の薬物治療について
4.1 過活動膀胱における薬物療法
4.2 腹圧性尿失禁における薬物療法
4.3 排出障害(抵活動膀胱)における薬物療法
4.4 間質性膀胱炎における薬物療法
4.5 女性泌尿器科の病気と漢方薬について
5 腹圧性尿失禁の治療に関して
5.1 中部尿道スリング手術
5.2 幹細胞による括約筋再生治療

1 今女性の泌尿器科が注目されている理由

前述したように、泌尿器科というのは前立腺肥大や性病、排尿障害など男性の病気を診るところというのが一般的なイメージだと思います。ところが、膀胱炎や腹圧性尿失禁、過活動膀胱など、女性の病気です。現代女性の5人に一人が、膀胱炎に悩んでいると言われており、腹圧性尿失禁や過活動膀胱などは出産や加齢が原因で起こりやすい泌尿器科の病気です。そして、女性でも膀胱がん、尿管がん、腎臓がんといった病気にかかることがあります。泌尿器科は決して男性だけではなく、女性にとっても非常に重要なのです。ところが泌尿器科医のほとんどが男性である現状から、女性の泌尿器科医を探すのも難しいでしょう。女性も泌尿器科受診を希望する人が多くなっているのに、女性医師が少ないことが今注目されています。また、女性の腹圧性尿失禁は、日常生活に影響も与えるため、非常に困っている人が多い病気です。しかしながら、メッシュを用いた手術の発達に伴い改善されるようになってきたことや過活動膀胱のボツリヌス療法の効果があるとされており、女性の泌尿器科が注目されている要因でもあります。

2 女性がかかる泌尿器科の病気

2.1 膀胱炎

膀胱炎は、膀胱内に侵入した細菌が膀胱内で繁殖して炎症を起こします。膀胱炎は男性よりも女性の方がなりやすく、それは女性の尿道が2〜3㎝と短く、外部から細菌が入りやすい構造であるためです。症状としては何度もおしっこに行きたくなる頻尿、排尿の最後に感じる排尿時痛、尿が残っている感じがある残尿感、血尿が出ることもあります。基本的な治療としては抗生剤の投与で良くなります。

2.2 過活動膀胱

過活動膀胱は、おしっこが我慢できない、急に行きたくなる、回数が多くなる、など症状があり、自分の意思に反して膀胱にうまく尿が溜まらない病気です。40歳以上の人に多く、神経性のものや女性ホルモンの影響、骨盤底筋のトラブルから起こると言われています。しかし、はっきりとした原因はいまだにわかっていません。これには、薬物療法や体操などの行動療法、ボツリヌス療法などがあります。

2.3 腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、くしゃみをした時や、重いものを持った時、跳んだり走ったりした時にお腹に力が入るとおしっこが漏れてしまいます。40歳後半の女性、出産を経験した人に多くみられます。尿道括約筋がゆるむことで起きてしまうものです。薬物療法や行動療法、手術で改善します。

2.4 骨盤臓器脱

骨盤臓器脱は、経産婦さんや高齢の女性に多くみられます。骨盤底筋が緩み膀胱、子宮、直腸など、臓器が膣から飛び出してしまうのです。座った時の違和感や、排尿障害も起こすことがあります。骨盤臓器脱は腹圧性尿失禁を合併することが多い病気です。筋肉を鍛える運動や手術によって改善します。

3 女性の泌尿器科の病気の検査について

3.1 採血検査

一般的に、尿もれや尿失禁のある方に採血で異常は見られませんが、採血検査では体内の炎症具合を調べます。ごく稀に、他の病気が隠れていることもあるため採血で確認します。

3.2 尿検査

尿検査は泌尿器科にとって重要な検査です。尿失禁や膀胱炎の原因となる細菌の種類を調べます。また赤血球や白血球、がん細胞の有無を調べます。

3.3 超音波(エコー)検査

尿失禁の原因が結石や腫瘍で場合もあるので、それらの有無や尿路の異常を調べます。超音波(エコー)検査は、体にゼリーを塗布し器械をあてて調べる検査です。痛みもなく被曝もない体に優しい検査です。

3.4 尿流量検査

おしっこの勢いや1回の排尿量、排尿の時間などを測ることで、尿路に異常はないか、膀胱の機能に問題がないかを調べます。

4 女性の泌尿器科の病気の薬物治療について

4.1 過活動膀胱における薬物療法

過活動膀胱の薬物治療としては、βアドレナリン受容体作動薬で膀胱の尿を貯める機能を高めます。それでも改善しない場合は、抗コリン薬を使用します。βアドレナリン受容体作動薬と抗コリン薬を併用することもあります。また、2020年から、ボツリヌス毒素の注入療法という新しい治療法が始まり、とても効果的です。

4.2 腹圧性尿失禁における薬物療法

クレンブテロールというβアドレナリン受容体作動薬を使用します。体操など、行動療法を同時に行うことで治療効果が高まります。また、漢方薬での治療も効果的です。

4.3 排出障害(抵活動膀胱)における薬物療法

膀胱の筋肉を増強させるベタネコール、ジスチグミンを使用します。αアドレナリン受容体遮断薬であるウラピジルを使用することもあります。

4.4 間質性膀胱炎における薬物療法

今までは間質性膀胱炎に対する効果的な薬剤はなく、三環系抗うつ薬や抗アレルギー薬のスプラタストトシル酸塩などが使用されていました。膀胱内注入療法としてジメチルスルホキシドを注入することで、改善すると言われています。2021年から新しい薬が誕生し、保険が適用されます。

4.5 女性泌尿器科の病気と漢方薬について

女性特有の泌尿器科系の疾患においては、更年期の女性に発症することも多く、更年期特有の不定愁訴(めまいや動機、イライラなどの症状はあるが検査しても異常がない)を訴える患者様も多いです。西洋医学的な薬物療法のみならず、漢方薬の効果も期待されます。

  • 過活動膀胱と牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
  • 膀胱炎と猪苓湯(チョレイトウ)
  • 間質性膀胱炎と当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
  • 腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱と補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

5 腹圧性尿失禁の治療に関して

5.1 中部尿道スリング手術

腹圧性尿失禁の治療で運動や薬物両方でも改善が見られなかった場合には、メッシュテープを用いた中部尿道スリング手術を行います。中部尿道スリング手術にはTVT手術とTOT手術があり、合併症も少なく、非常に治療成績の良い治療法です。

5.2 幹細胞による括約筋再生治療

幹細胞を尿道に注入して尿道括約筋機能を改善させる治療です。これは男性の前立腺手術後に尿道括約筋の機能が悪くなって尿失禁を起こしてしまう場合に行われていた治療です。この手術の治療成績がとても良かったことで最近では女性の腹圧性尿失禁の治療として行われるようになりました。

このように女性の泌尿器科受診はとても重要です。また、泌尿器科の病気は日常の生活に支障をきたす厄介なものも多く、適切な治療を行うことが望ましいです。当院では、女性の泌尿器科医は現時点(2021年現在)在籍しておりませんが、今後、採用を考えています。当院で再生医療や手術は行なっておりませんが、これらの治療に関して相談など、いつでも可能です。お気軽にご相談ください。

現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。

またオンライン診療も行っております。

全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記のリンクか下部のバナーよりご相談下さい。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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