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血尿(おしっこ、尿に血が混じる)

◆目次◆

1 血尿
 1.1 血尿とは
 1.2 血尿の種類
2 血尿の原因
 2.1 感染症
  2.1-1感染症を放置すると
  2.1-2感染症の治療
 2.2 結石
  2.2-1結石を放置すると
  2.2-2結石の治療
 2.3 悪性腫瘍
  2.3-1悪性腫瘍を放置すると
  2.3-2悪性腫瘍の治療
3 血尿の検査
 3.1 顕微鏡的血尿
 3.2 肉眼的血尿の検査

血尿

血尿とは

血尿と聞くとどんな状態を想像するでしょうか。痛みとともに出る、トイレが真っ赤に染まる、テレビで怖い病気が隠れていると言っていた、など様々なことを想像してしまうと思います。実際に血尿を経験した方はびっくりしてすぐ病院に受診されます。原因がわからないでもやもやと考えている時間は患者様を非常に不安にさせるのです。そんなもやもやを少しでも払拭出来ればと思いこのページを作りました。下記に血尿の種類とその原因・症状・治療について説明していきたいと思います。

血尿の種類

血尿には2種類あります。自分の目には見えないけど顕微鏡下では赤血球が確認できる顕微鏡的血尿と、肉眼でも見える肉眼的血尿があります。
つまり、患者さんが家で血尿に気付いて受診される場合が肉眼的血尿で、健診などの尿検査で偶然発見される場合を顕微鏡的血尿(尿潜血とも呼びます)と言います。

一般的に言われている血尿は前者の肉眼的血尿です。

一概にはどちらの方に重い病気が隠れているとは言えませんが、肉眼的血尿の場合は膀胱鏡を含めて総合的に尿路を検査する必要があります。顕微鏡的血尿でも放っておくと重大な病気に繋がる場合がございますので、泌尿器科での検査が必要になります。

血尿の原因

血尿を引き起こす主な病気は感染症、結石、悪性腫瘍(癌)の3つに分けられます。血尿とともに出る症状(腹痛、腰痛、発熱など)とその治療法も解説します。

感染症

細菌が感染して起こる感染症でも血尿は起こります。

感染症の種類には、膀胱炎、前立腺炎、腎盂腎炎などがあります。
感染症では細菌と人間の白血球が戦うことで、その戦いの過程で膀胱や腎臓の組織が壊れて出血し血尿という形で現れます。若い女性が腹痛や排尿時痛を伴う血尿で受診することが多くあります。本人はとても心配して受診されるのですがこれは出血性膀胱炎という状態であり、膀胱炎に準じた抗生剤投与で完治します。基本的に膀胱炎は発熱を伴いません。他の感染症は発熱が伴うことが多いです。

感染症を放置すると

感染症を治療せずに様子をみてしまうと、全身に血液を介して菌が蔓延する敗血症と呼ばれる状態になります。敗血症は命を落としてしまう危険性がある非常に重篤な状態です。血尿を伴う感染症の治療には早期の抗生剤投与が重要です。

感染症の治療

先述の通り尿路感染症の治療の基本は抗生剤です。また、感染の原因となっている結石や腫瘍や尿路奇形がある場合、抗生剤を投与するだけでなくその原因を除去しなければいけません。感染が治ってくれば血尿も自然に治っていきます。

結石

泌尿器科の病気として有名な尿路結石も血尿の原因となります。尿路結石には尿管結石、腎臓結石、膀胱結石があります。全ての結石で血尿が起こりえます。
それは結石が尿管、腎臓、膀胱の上皮と接触することで上皮が傷つき出血するのです。尿管結石は血尿と同時に激しい腹痛や腰痛も引き起こします。腎臓結石は痛みは伴いません。膀胱結石は残尿感や頻尿などの膀胱刺激症状を伴います。

結石を放置すると

尿路の結石を放置してしまうと腎臓機能の低下に繋がります。最終的に人工透析を導入しなければいけない危険性もあります。尿路の結石はすぐに治療する必要はありませんが専門医の判断で適切な時期に治療が必要です。

結石の治療

尿路結石の治療は大きく下記の3種類に分かれます。

  1. 保存的治療
    自然に結石が出るのを待ちます。水分摂取と適度な運動が大切です。5mm以下の結石は出やすいとされてます。1cm以上だと保存的治療は難しい場合もあります。
  2. 体外衝撃波による破砕
    結石がレントゲンで見える場合は体外衝撃波による結石破砕が可能です。保存的治療が難しい場合に体外衝撃波による治療を検討します。
    治療の成功率は85-90%と言われております。
  3. 内視鏡治療
    保存的治療が難しい場合は尿道を介しての内視鏡的治療を行います(皮膚切開は行いません)。治療の成功率が95%以上と高く、近年は体外衝撃波より内視鏡的治療を行う施設が増えてきました。

悪性腫瘍

血尿の原因として1番怖いのが悪性腫瘍、すなわち癌です。
癌細胞は正常な細胞と違い、非常にもろい構造です。
なのでちょっとした刺激や力ですぐ壊れてしまいます。
尿路に出来た悪性腫瘍の組織が崩れることによって出血します。それが身体からのSOSのサインとなります。

血尿を生じる癌は、膀胱癌、尿管癌、腎盂癌、前立腺癌が挙げられます。この癌の中で最も多く血尿の原因となる癌は膀胱癌です。膀胱癌は基本的に血尿のみの症状で痛みや発熱は伴いません。尿管癌、腎盂癌も血尿の原因となりますが頻度は高くありません。前立腺癌は初期であれば血尿を伴うことはほとんどなく、進行している場合血尿を伴います。前立腺癌は2020年には男性の癌にかかる人の数が1番になると言われております。

悪性腫瘍を放置すると

癌は皆さんご存知の通り、早期発見早期治療が原則です。進行してしまうと手術が出来なくなる可能性もあります。血尿が悪性腫瘍のサインであることも多く、血尿は放置せずに気づいたらすぐに泌尿器科を受診しましょう。

悪性腫瘍の治療
  1. 膀胱癌の治療
    早期の膀胱癌は経尿道的内視鏡治療で治療します。尿道を経由しての治療なので皮膚切開は行いません。
    進行した膀胱癌の治療は膀胱を一つの塊として摘出し、人工の膀胱を腸管や尿管で代用します。腹部から尿を排泄することが必要です。
  2. 前立腺癌の治療
    ホルモン療法、放射線療法、手術、PSA監視療法が保険適応となります。PSA値、年齢、画像による進行度合いを考慮して治療の選択を行います
  3. 腎盂・尿管癌の治療
    基本的には外科的治療で腎臓と尿管を一塊にして摘出します。尿管癌の場合も部分切除だと再発率が高いと言われているため、標準的治療は腎盂尿管を一塊にして摘出します。手術後も腎臓は片側だけとなりますが腎臓機能は保たれ普通に生活することは可能です。

血尿の検査

顕微鏡的血尿

顕微鏡的血尿(尿潜血)は、95%以上は検査して異常が見られない生理的な顕微鏡的血尿です。

顕微鏡的血尿の方に当院で行なっている検査は腹部超音波検査と尿細胞診検査、尿培養検査です。腎機能の低下なども疑われる場合は採血検査も行います。

腹部超音波検査は腎臓、膀胱、前立腺、尿管を超音波を当てて観察し、結石や腫瘍などがないか確認する検査です。腹部超音波検査は全く痛みは伴いません。

尿細胞診検査は、尿を提出してもらい、尿中に癌細胞が無いかを顕微鏡で確認する検査です。患者様にコップに尿を提出して頂くことで検査できます。先述の通り、癌は異常組織なので非常に壊れやすく、尿中に癌細胞が出て来やすいのです。従って尿中に癌細胞を認める場合は癌を強く疑います。

これらの検査で異常が無い場合、尿検査で顕微鏡的血尿は見られますがそれ以上の検査は不要です。その後は健診などで1年に1回定期的にフォローして頂きます。

肉眼的血尿の検査

肉眼的血尿の患者様は膀胱炎や前立腺炎などの感染症を積極的に疑わない限りは尿検査、採血、腹部超音波検査に加えて軟性膀胱鏡検査をお勧めしています。

今日の軟性膀胱鏡は従来の硬性膀胱鏡と違って検査時の痛みがほとんど無くなったので安心して検査を受けて頂けます。検査時間も短く、1-2分で終わります。

当院では検査から診断まで全て泌尿器科専門医が行っております。血尿は気付いた時点で早期に受診し早期治療することが大切です。ご自身で血尿に気づかれた方、健診で血尿を指摘された方は当院医師までご相談ください。

また、当院でオンライン診療を2020年4月17日より開始しました。初診再診ともに保険診療で認められております。お気軽にご相談下さい。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医
名古屋大学出身
年間30000人以上の泌尿器科と消化器科の外来診察を行う
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。

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