メニュー

肝機能障害とは 〜その原因・症状・検査・治療について〜

はじめに

健康診断や⼈間ドックなどで肝機能障害と指摘された⽅もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、単に「肝機能障害」と⾔われてもピンとこない⽅がほとんどだと思います。肝機能障害と診断されてもご本⼈の⾃覚症状はほとんどないのが⼀般的ですから。

この記事では肝機能障害とはどのような状態なのか、その原因、症状、検査、治療について皆様に分かりやすく説明させていただきます。皆様の理解の助けとなると幸いです。

肝臓とは

肝臓は私たちの体の中で⼀番⼤きい臓器です。体重の1/50程度の重さ(約1.2〜1.5kg)があり、お腹の右上、横隔膜の下、肋⾻に守られるように位置しています。

肝臓の働き

肝臓は⽣命の維持に不可⽋である⼤切な役割をたくさん担っています。

☆代謝機能

私たちが⾷事として摂取したものは分解され、胃や腸で栄養素として吸収されて肝臓に運ばれます。肝臓ではそれらの栄養素を様々なものに組み替え、必要な時に必要な場所に運び、すぐに使わない時には肝臓内に貯蔵されます。

☆解毒・排泄

アルコールや薬の成分などの有害物質を無毒化して尿や汗、便などと⼀緒に体の外に排出する働きがあります。

☆胆汁の⽣成

⾷べ物の消化に必要な胆汁を⽣成します。

肝臓は沈黙の臓器

肝臓は沈黙の臓器と⾔われています。その理由は、肝臓は予備能⼒と再⽣能⼒が⾮常に優れており、その80%近くが障害されても症状を現さないからです。
さらに再⽣する⼒も強い臓器で、2/3程度を切除したとしても元の⼤きさに戻る事ができます。
そのため、症状が出た頃には病気が進⾏してしまっているケースが⾮常に多いのが現状です。

肝機能障害とは

肝機能障害とは何らかの原因で肝臓の機能が低下した状態を⾔います。主に健康診断や⼈間ドックなどで⾎液検査をした際、GOT(AST)・GPT(ALT)・γ-GTP・ALP・LDHなどが上昇し、異常値となった場合に肝機能障害と診断されます。
前述したように肝臓は沈黙の臓器ですので、肝機能障害があってもご本⼈の⾃覚症状に乏しく、健康診断や⼈間ドックで異常値が出ても医療機関への受診へと繋がらないケースが多くなっています。

肝機能障害の原因

肝機能障害の原因は多岐に渡ります。このうち、⼀般的なものをいくつか挙げていきます。

肝炎ウイルス

肝炎ウイルスのうち、A型やE型肝炎ウイルスは主に経⼝感染によって起こります。⽣(なま)の⾷品を⾷べる、不衛⽣な環境下での⽔や⾷事などが原因です。
症状は急性で、発熱、腹痛、嘔吐、⻩疸、疲労感、褐⾊尿などですが、基本的には対症療法で⾃然治癒します。

⼀⽅、B型肝炎ウイルスは主に体液や⾎液を介して感染します。感染してから数ヶ⽉でウイルスが⾃然と体から排除される⼀過性感染と、⻑期間に渡ってウイルスが肝臓にダメージを与え続ける持続感染があります。持続感染が続くと慢性肝炎となり、そのうち20〜30%が肝硬変や肝臓がんへと進⾏してしまいます。

C型肝炎ウイルスも主に体液(稀と⾔われています)や⾎液を介して感染します。15〜45%の⽅は⾃然にウイルスが排除される⼀過性感染となり、残る55〜85%という⾼い確率で持続感染による慢性肝炎となり、そのうち15〜30%が肝硬変へと進⾏してしまいます。

アルコール性肝炎

アルコールの過剰摂取によって肝臓に中性脂肪が蓄積し、炎症を起こして肝機能が異常値となった状態です。進⾏すると肝硬変や肝臓がんへと進⾏してしまいます。

⾮アルコール性脂肪性肝疾患(NASH/NAFLD)

⾮アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はアルコールやウイルスなどが原因ではない脂肪肝のことを⾔います。原因として、肥満や⾼⾎圧糖尿病など、⽣活習慣病と密接に絡み合っており、近年⾮常に増加しています。この状態が進⾏すると肝臓に炎症が起きた状態(NASH)となり、さらに肝硬変や肝臓がんへと進
⾏する恐れがあります。

薬物性肝障害

薬物性肝障害とは医療機関やドラッグストアなどで購⼊できる医薬品や漢⽅薬、サプリメントなどの副作⽤により、肝臓の機能が障害されることを⾔います。

⾃⼰免疫性肝炎

⾃⼰免疫性肝炎とは何らかの原因で免疫の異常が起き、⾃らの肝臓を攻撃してしまう病気です。原因ははっきりとは分かっておらず、中年以降の⼥性に多いのが特徴です。

肝機能障害の症状

肝機能障害には急性と慢性があります。
⽣ものなどの摂取による肝炎や薬剤性のように短期間で治まるものを急性、B型・C型肝炎ウイルスによる持続感染やアルコール摂取によるもの、⾃⼰免疫性肝炎によるものなど⻑期間に渡って起こる慢性に分けられます。

急性の場合には発熱、腹痛、嘔吐、下痢、⻩疸、⾷欲不振、倦怠感、褐⾊尿などが起こる場合があります。症状が軽いケースもあり「⾵邪を引いたかな」くらいで、受診に繋がらないケースも多々あります。
慢性の状態になると困ったことに症状がほとんどありません。しかし、肝臓内では肝細胞の破壊と再⽣が繰り返され、肝硬変へと進⾏し、肝不全、肝臓がんへと繋がります。症状が進⾏するにつれて、浮腫、腹⽔、⻩疸の症状が現れます。

肝機能障害の検査

⾎液検査

⾎液検査では⼀般状態の確認のほか、AST、ALT、γ-GTPなど肝細胞が破壊されることで上昇する項⽬を調べたり、肝炎ウイルス(A型、B型、C型、E型)の値、ALPやビリルビン、コリンエステラーゼなど肝機能の指標、⾃⼰免疫疾患の抗体(抗核抗体)、腫瘍マーカーを調べたりします。
また、甲状腺ホルモンと肝機能障害も密接に関係しており、原因不明の肝機能障害が実は甲状腺の病気によるものだったということもありますので、必要に応じて検査していきます。

腹部超⾳波検査

腹部超⾳波検査は短時間で⾏え、患者様への負担が少ない検査ですが、肝臓の⼤きさや脂肪の有無や程度、腫瘍がないか、肝臓内の⾎管の太さや形に異常がないか、肝臓の線維化(硬くなること)の有無など多くの情報が得られるとても優秀な検査です。
当院でも超⾳波の検査を受けていただくことが可能です。

CT検査

CT検査は放射線被曝があるものの、肝臓を含め、腹部全体を詳細に観察できる検査です。また造影剤を⼊れて検査することで、肝臓内の⾎流や⾎管⾛⾏などの詳細な観察ができます。万が⼀、癌があった場合には周囲の臓器への転移の有無も確認できます。

胃カメラ検査

肝硬変が起こると胃⾷道静脈瘤を合併することがあるため、胃カメラで⾷道〜胃〜⼗⼆指腸までを観察します。

これらの検査で詳細な検査が必要と判断された場合、さらに詳しい検査をしていきます。肝⽣検、腹腔鏡検査などがそれに当たります。

肝機能障害の治療

肝機能障害の治療はそれぞれの疾患に準じて⾏います。

肝炎ウイルス

肝炎ウイルスによって急性の症状が起こっている場合には安静、⼗分な補液などの対症療法で⾃然治癒することがほとんどです。重症化している場合にはステロイド治療を⾏うこともあります。約1~2%の⽅が劇症肝炎(急激に肝臓の機能が低下し、深刻な状態になる事)を起こすことがあるので注意が必要です。

⼀⽅でB型肝炎が慢性化している場合は、残念ながらウイルスを完全に排除することは難しいとされていますので、ウイルス量を抑えるインターフェロン療法や核酸アナログ製剤による治療を⾏います。
C型肝炎の治療はインターフェロン療法や抗ウイルス薬を使用することで⾼い確率でウイルスの増殖が抑えられます。

アルコール性肝炎

原因がアルコールである場合には、禁酒が絶対的な原則となります。
これに合わせて、抗酒剤(ALDH阻害剤)が使われることもあります。

アルコールが原因ではない脂肪性肝炎

アルコールが原因ではない脂肪性肝炎の原因として⽣活習慣が挙げられます。
そのため、是正すべき⽣活習慣がある場合にはそれらの改善を⾏います。

薬剤性肝障害

肝障害の原因となった薬剤やサプリメントの中⽌が第⼀となります。

⾃⼰免疫性肝炎

免疫を抑える薬やステロイドなどを使⽤します。炎症の改善が⾒られたとしても中⽌するとまた悪化してしまうこともあるため、専⾨医による薬のコントロールが必要です。

肝機能障害にならないための予防

肝炎ウイルスについては、⽣ものを⾷べる際には⼗分気をつける、加熱したものを⾷べる、性⾏為の際はコンドームをつける、不特定の相⼿との性⾏為をしない、注射針の使い回しをしないなど、予防対策をすることが可能です。
また規則正しい⾷⽣活、適度な運動、適正なアルコール量を守る、禁煙などの⽣活習慣を整えることも予防に繋がります。ガイドラインによると飲酒量低減の⽬安として「男性では1⽇平均40g以下、⼥性では平均20g以下」が⽬安とされています。アルコール20gとはビール500ml、ワイン2杯弱ですので参考になさってください。

また、健康診断や⼈間ドックを積極的に受診する事や、結果の異常を指摘された際には医療機関を受診し、超⾳波検査やCT検査を受け、早期発⾒・早期治療に繋げることが⼤切です。

まとめ

肝機能障害は⾃覚症状がないため放置してしまう⽅が多いですが、慢性肝炎になってしまうと肝硬変、肝臓がんへと進⾏してしまう可能性があります。
健康診断や⼈間ドックで肝機能障害を指摘された⽅は必ず医療機関を受診し、専⾨医の診断を受けましょう。
⼤宮エヴァグリーンクリニックでは肝機能障害の検査、診断、治療が可能です。
どんなことでも当院までご相談ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医、消化器内視鏡学会所属
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。
再生医療のクリニックも運営

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME