胆嚢ポリープ
多くの方が、胆嚢ポリープと聞いてもピンとこないかもしれません。胆嚢ポリープは文字通り、胆嚢にできるポリープですが、無症状のことが多く、健康診断での超音波検査で偶然に見つかるといったケースも少なくありません。胆嚢ポリープは良性の場合がほとんですが、中には悪性の場合もありますので、その病態について知っていれば早期発見・早期治療に繋げることができます。今回は、胆嚢ポリープについて詳しく説明させていただきますので、参考にしていただければ幸いです。
胆嚢ポリープとは
胆嚢とは
胆嚢は、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にあり、西洋梨のような形をしています。胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を蓄えて濃縮する働きがあります。そして食事をする度に収縮し、胆汁を分泌することにより消化を助ける役割を持っています。
胆嚢ポリープとは
胆嚢ポリープとは、胆嚢内にできる「粘膜が盛り上がってできた隆起病変」の事で、そのうち90%は良性のポリープです。胆嚢ポリープによる自覚症状はなく、良性の場合には治療を行わず、経過観察で様子をみます。一方で、複数のポリープがあったり、大きなポリープの場合にはがん化していく可能性もあります。胆嚢ポリープは早期に発見すれば適切な治療ができますので、定期的な検査が必要です。
良性と悪性の特徴
良性の特徴
ポリープの大きさは10mm以下で、ポリープに茎がある有茎性と呼ばれるタイプのポリープが多いとされています。多発することも多く、形は桑の実のような形をしています。
悪性の特徴
ポリープの大きさは、10mm以上で、ポリープの茎が幅広い広基性病変と呼ばれる形状をしていることが多いとされています。悪性の場合は放置しておくと徐々に大きくなるという特徴があります。
胆嚢ポリープの症状
胆嚢ポリープは多くの場合、自覚症状がありません。ポリープが大きくなってきて胆汁の流れが悪くなると右の上腹部や背中に痛みが生じたり、消化不良を起こしたり、食欲不振を起こしたります。
胆嚢ポリープの種類
胆嚢ポリープには、5つの種類があります。胆嚢ポリープは、基本的には無症状なことが多いため、診断には、後に説明する検査を行い、最終的には胆嚢ごと切除して、ポリープの組織検査を行い確定診断とします。
コレステロールポリープ
コレステロールポリープはコレステロールが蓄積してできたものです。胆嚢ポリープの中で最も多く、約90%を占めています。胆嚢の中に多発しやすいことが特徴で、その多くは数mm以内の小さなものが多く、10mmを超えることはほとんどありません。良性のポリープで、治療を必要としないケースがほとんどです。
腺腫性ポリープ
腺腫性ポリープの多くは良性のポリープですが、大きさや形状によってはがん化することもあります。大きさは数mmから10mm未満のものが多いとされています。
過形成性ポリープ
胆嚢の粘膜表面の細胞が、過剰に増殖してできるポリープで、がん化するリスクは低いです。大きさも5mm以内のものが多いとされています。
炎症性ポリープ
胆嚢ポリープのおよそ1%が炎症性ポリープと言われています。胆嚢の粘膜細胞の増殖が原因で起こる良性のポリープで、慢性胆嚢炎の患者様に多く見られます。
胆嚢がん
胆嚢ポリープの中でも粘膜の表面からなだらかに隆起している病変(公基性)で、徐々にポリープが大きくなっていく場合は、胆嚢がんの可能性が高く、大きさが20mm以上を超えると胆嚢がんである確率は、80%ほどと言われています。
胆嚢ポリープの検査
腹部超音波検査
超音波検査では、ポリープの場所や大きさ、形などを観察することができます。胆嚢ポリープは超音波検査で発見されることが多く、検査による痛みもないため、患者様にとって非常に有用な検査となります。食事後は胆嚢が収縮して観察しづらくなりますので、確実に観察する為には空腹時に検査をすることが必要です。
CT検査
CT検査では、ポリープの有無やその形状を観察することができます。また、造影剤を使用することで腫瘍などの病変や、腫瘍付近の血管走行が分かりやすくなります。
MRI検査
MRI検査では、ポリープの有無や大きさ、形状、場所などが分かります。さらに、MRCPといって、MRIを使用して胆嚢・胆管・膵管を同時に描出する検査をする場合もあります。MRIは放射線を使用しない為、身体への負担もなく、非常に有用な検査です。
血液検査
血液検査で胆嚢ポリープはわかりません。
ですが、胆嚢ポリープがあって、それにより感染の兆候がある場合には白血球や炎症の値が上昇することがあります。また、胆嚢がんを疑う場合は腫瘍マーカー(CA19-9・CEA・AFPなど)を調べることもあります。
胆嚢ポリープの治療
良性のポリープの場合
胆嚢ポリープが良性で自覚症状がない場合は、特別な治療をせずに経過観察をします。その場合でも、定期的に超音波検査をして、ポリープが大きくなっていないか、形状や数に変化がないかを確認することが大切です。
また、10mm以上のポリープや急速に成長しているポリープはがんのリスクが高まるため、胆嚢ごと切除することが望ましいとされています。
悪性が疑われる場合
腹腔鏡下胆嚢摘出術
がんが胆嚢の粘膜や壁内に留まっている場合には腹腔鏡を使用し、胆嚢を摘出する方法をとることが多いです。(腹腔鏡下胆嚢摘出術) お腹に小さな穴を開けて腹腔鏡を入れ、炭酸ガスでお腹を膨らませることで観察しやすくして胆嚢を摘出します。この方法を取る場合、体にできる傷は小さく、患者様の術後の負担も少なくて済みます。
開腹での胆嚢摘出術
周囲の臓器まで浸潤している場合にはその場所を含めて摘出する必要がありますので、開腹手術が選択されます。手術では胆嚢自体だけでなく、周囲の組織やリンパ節も必要に応じて摘出します。合わせて化学療法や放射線治療を行う場合もあります。胆嚢を摘出しても、胆嚢の代わりに胆管が太くなって胆汁を貯めることができる為、食べ物の消化にはほとんど影響はありません。
胆嚢ポリープの原因と予防
胆嚢ポリープができる原因ははっきりとは解明されていませんが、「肥満」「脂質異常症」「糖尿病」などが関連していると考えられます。そのため、胆嚢ポリープの予防には食事管理や適切な運動を行うことが有効です。また、年齢が進むほど胆嚢ポリープの発生リスクが高まると言われており、男性よりも女性に発生リスクが高いと言われています。
終わりに
胆嚢ポリープは自覚症状がほとんどありません。また、多くが良性のポリープと言われています。
ですが、まれにがん化することがありますので、定期的な検査を受けることが大切です。当院では胆嚢ポリープの検査・診断が可能です。外科的治療が必要と判断した場合には提携している医療機関をご紹介させていただいております。ご心配なことなどありましたらどんなことでもご相談ください。

名古屋大学出身
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
内科認定医
肝臓、胆嚢、膵臓から胃カメラ、大腸カメラまで消化器疾患を中心に幅広く診療を行っている。