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臍(へそ)から膿が出る
〜尿膜管遺残(にょうまくかんいざん)の可能性について〜

はじめに

「へそから黄色い液体がにじんでくる」「ちくちく痛む」「触ると腫れている気がする」
そんな症状があると、驚いたり不安に感じる方も多いと思います。
実は、成人であっても「へそから膿が出る」ことは珍しくありません。皮膚の表面で起きる感染の場合もありますが、なかには 生まれつきの体の構造が関係していること があります。それが 尿膜管遺残(にょうまくかんいざん) です。
ここでは、尿膜管遺残とは何か、なぜ膿が出るのか、放置するとどうなるのか、治療方法までわかりやすく解説します。

1 尿膜管遺残とは何か?

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるとき、膀胱からへその方向へ細く伸びる「通り道」のような組織があります。これが「 尿膜管 」と呼ばれるものです。成長とともに、この通り道は役割を終え、生まれる頃には自然に閉じて、細いひも状の固い組織へと変わります。
しかし、人によってはこの通路の一部または全体が完全に閉じず、中が空洞のまま残ってしまうことがあります。これが 尿膜管遺残 です。
この“残っている通路”の内部には、外から細菌が入り込みやすく、感染や炎症が起きやすくなります。その結果、へそから膿が出たり、へそ周りが腫れて痛んだりする症状が現れます。

2 尿膜管遺残でみられる症状

尿膜管遺残があると、次のような症状が出ることがあります。

  • へそから膿や血がにじむ
  • 「生臭いニオイ」を感じる
  • へそ周囲が赤く腫れる
  • 押すと痛い
  • 下腹部の奥が重く痛む
  • 感染が強い場合は発熱する

「へそを清潔にしても治らない」「繰り返す」「シャツに黄色い染みがつく」
このような場合には、尿膜管遺残が強く疑われます。

3 他の病気との違い

へそから膿が出る原因は他にもあります。皮膚が感染する場合「臍炎(さいえん)」や、皮膚の中にしこりができる「粉瘤(ふんりゅう)」が原因のこともあります。
しかし 尿膜管遺残は「へそのさらに奥に通路が残っている」状態 であり、ここに炎症が起きると 治っても再発しやすい 点が大きな特徴です。

「薬で治ったと思っても、しばらくしてまた膿が出る」という場合、根本的に通路そのものを取り除かない限り、繰り返す可能性が高いのです。

4 放置するとどうなる?

尿膜管遺残は、症状が軽いと「そのうち治るだろう」と放置されてしまうことがあります。しかし、放置には次のようなリスクがあります。
炎症を繰り返すことで通路が膿で満たされて大きく腫れる場合があり、強い痛みが出ることがあります。また、長い期間に渡り炎症を繰り返すと、非常にまれではありますが 尿膜管が「がん化」する可能性 も指摘されています。

したがって、尿膜管遺残は 症状が軽くても早めに治療方針の評価をし、根本治療を含めた検討をすることが大切です。

5 診断方法

大宮エヴァグリーンクリニックでは、まず問診と視診をしたうえで、へその奥の状態を確認するために超音波(エコー)検査を行います。必要に応じて、尿膜管の状態や炎症の広がりを詳しくみるためにCT検査を追加することもあります。

いずれも痛みはほとんどなく、短時間で行える検査ですのでご安心ください。

6 尿膜間遺残の治療

一般的に治療は 「炎症を抑える段階」 と 「再発を防ぐ根本治療」 の 2 段階で行うことが多いです。

まず、感染や炎症を抑えるために抗生剤を使用し、膿がたまっている場合には膿を出す処置を行います。炎症が落ち着いたら、尿膜管の残存部を切除する治療を検討します。
近年では、傷が小さく体への負担が少ない 腹腔鏡手術 が一般的です。尿膜管を取り除くことで、膿の再発を防ぎ、将来的な悪性化のリスクも抑えることができます。

7  その他(粉瘤や臍炎)の治療

粉瘤(ふんりゅう)を根本的に治すには、皮脂や角質が溜まった袋ごと切除する手術が必要ですが、小さくて痛みのないものは経過観察とするケースもあります。炎症が強く、腫れや痛みが強く出ている場合は、まず膿を出す処置や抗生剤で腫れを抑え、落ち着いてから手術を行うのが一般的です。

臍炎(さいえん)の場合、軽度であれば塗るタイプの抗菌薬で治療できますが、症状が強い場合は内服の抗生剤を使用します。膿が皮膚の下にたまっている場合には、切開して膿を出すことで改善が早まります。

8 まとめ

へそから膿が出る症状は、皮膚の汚れや一時的な炎症だけでなく、尿膜管遺残という、生まれつきの構造が関係することもあ離ます。

洗っても改善しない、同じ症状が何度も起こる場合は、皮膚の表面ではなくへその奥で炎症が起きている可能性があります。その場合は、状態を一度確認し、炎症を抑えた上で必要に応じて根本的な治療が必要になるかもしれません。
気になる症状があるときは、我慢したり様子を見るより、早めに相談することで再発や悪化を防ぐことができます。

「へそからの膿」について、当院では消化器内科と泌尿器科の両面から診断することが可能です。万が一、特別な処置や手術が必要になった場合には適切な病院を紹介させていただきますのでご安心ください。
「へそから膿が出る」「炎症を繰り返す」など気になる症状がある方は、お気軽に大宮エヴァグリーンクリニックまでご相談ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医、消化器内視鏡学会所属
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。
再生医療のクリニックも運営

 

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