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⾷道がんの初期症状・原因・リスク・検査・治療について〜早期発見するために必要な事〜

[2024.02.06]

はじめに

⾷道がんと聞くと、どのようなことをイメージしますか。「芸能⼈の◯◯が⾷道がんで亡くなった」「派⼿な⽣活をしている⽅に多い」とイメージする⽅も多いのではないでしょうか。
必ずしも芸能⼈が⾷道がんになりやすいというわけではないのですが、⾷道がんはこれからお話しする⽣活習慣によるところが⼤きく、「芸能⼈=その⽣活習慣を持つ」とイメージされやすいというところがあるのかもしれません。
⾷道がんは早期であれば内視鏡で切除可能ですが、進⾏してしまうと内視鏡では取りきれず、胸やお腹を開ける⼤掛かりな⼿術が必要となってしまいます。
そこでこの記事では、⾷道がんを⾒逃さないための初期症状 5 選と、⾷道がんになりやすいリスクや原因などについて皆様に分かりやすく説明させていただきたいと思います。

1 ⾷道がんとは

⾷道は咽頭(のど)から胃までを繋ぐ約 25cm の管状の臓器であり、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜で構成されています。
⾷道がんは⾷道の粘膜から発⽣する癌のことを⾔い、罹患率は⼈⼝ 10 万⼈に対して約 20 ⼈で、男性は⼥性の約 6 倍という⾼い割合となっています。
内視鏡で切除可能な早期の⾷道がんの場合、5 年⽣存率は 75%となっており、進⾏した⾷道がんの場合では、5 年⽣存率は 20%という低い数字となっています。
そのため、初期の段階で⾒つけることが⾮常に⼤切と⾔えます。

2 ⾷道がんの原因・リスク

2-1 アルコール・喫煙

アルコールを飲むと顔が⾚くなる⽅がいらっしゃいますが、このタイプの⽅は⾷道がんのリスクが⾼くなります。
アルコールを飲むと酵素の働きによってアルコールがアセトアルデヒドという物質に分解されます。このアセトアルデヒドは発癌性があるため無害な物質に変化させなければなりません。そこでさらに酵素の働きでアセトアルデヒドを酢酸に変化させます。
ところがこのアルコールを分解する酵素の働きが弱いと、アセトアルデヒドがうまく分解されずに⼝腔や⾷道に残ってしまい、発癌のリスクとなってしまうのです。
また、アセトアルデヒドは⾎管を拡張させ、顔が⾚くなったり、頭痛を起こしたりと様々な悪影響を及ぼしてしまいます。

アルコールそのものにも発癌性がありますので、極⼒避けることが望ましいですが、付き合いで飲まなければならない時もあると思いますので、節度ある適度な飲酒を⼼がけることが⼤切です。
また、喫煙は予防できる最⼤の死亡原因と⾔われている通り、⾷道がんを含む様々な癌だけではなく多くの疾患の原因となります。
このように、喫煙とアルコールは⾷道がんの原因となりますが、その両⽅が習慣となっている男性はそうでない⽅に⽐べて⾷道がんになるリスクが 35 倍と⾔われています。
「芸能⼈」や「派⼿な⽣活をしている⽅」はこのような⽣活習慣を持つというイメージから「⾷道がんが多い」と結び付けている⽅が多いのかも知れませんね。

2-2 ⾟いもの・熱いもの

⾟いものや熱いものは直接⾷道を通るため、粘膜を傷つけやすく、⾷道がんのリスクとなります。
これらを好んで⾷べる⽅は⾷道がんのリスクとなることを理解し、⾷べ過ぎには注意しましょう。

3 ⾷道がんを早期発⾒するための検査

⾷道がんを早期に発⾒するためには胃カメラ検査が何より確実です。健康診断や⼈間ドックを毎年決まった時期に必ず受診することと、少しでも違和感を感じた時には医療機関を受診して、胃カメラ検査を受けるようにすることが⼤切です。
胃カメラ検査はカメラで⾷道・胃・⼗⼆指腸を直接観察することができ、疑わしい病変があった場合にはその場で組織を採取して検査することができます。
胃カメラ検査に恐怖⼼がある⽅も多いと思いますが、今は鎮静剤を使⽤して苦痛なく検査が受けられる医療機関も多くなっておりますので、安⼼して受けてみてはいかがでしょうか。(当院でも鎮静剤を使⽤した胃カメラを受けていただくことができます。)

4 ⾷道がんの治療

⾷道がんが⾒つかった場合、そのステージや患者様の生活背景、年齢、希望などを総合的に鑑みて治療が選択されます。
⼀般的には、癌が粘膜にとどまっており(0 期)、リンパ節転移がない場合には内視鏡切除が推奨されます。
⼀⽅で癌が粘膜下層にとどまっている(I 期)以降の場合には外科的⼿術が推奨されます。これに合わせて放射線治療や化学療法が⾏われる場合があります。
⾷道の周りには気管や肺、⼤動脈などの⼤切な臓器があるため、⼿術は⻑時間に及び、患者様の体への負担も⼤きいものとなってしまいます。
そのため、内視鏡切除可能な早期の段階で発⾒するということが何より⼤切です。

5 ⾷道がんの初期症状

早期発⾒・早期治療が⾮常に⼤切な⾷道がんの初期症状を 5 つ紹介させていただきますので、これらの症状に気づかれた⽅は胃カメラ検査のできる医療機関を受診するようにしてください。

5-1 ⾷道がんの初期症状その① 熱いものが胸にしみる

これは⾷道がんの⽅に特徴的な症状であり、他の疾患で起こることはあまりありません。
逆流性⾷道炎は胃酸が⾷道に逆流することで起こりますが、ゲップ・胸焼け・胃もたれとして⾃覚される⽅が多く、熱いものを飲み込んだ時にしみると感じる⽅はあまりいらっしゃいません。
そのため、熱いものがしみる場合には医療機関を受診して胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

5-2 ⾷道がんの初期症状その② チクチクとした胸の違和感

「物を⾷べる時もそうでない時も胸にチクチクとした違和感を感じる」ということも特徴的です。
この症状は⾷道だけではなく、⼤動脈や肺からくる症状の場合もありますので、医療機関を受診して胃カメラ検査や CT 検査を受けることが⼤切です。

5-3 ⾷道がんの初期症状その③ ⾷べ物がつかえる

⾷道がんが⼤きくなっていくと癌が⾷道の内腔を徐々に塞ぎ、⾷べ物を飲み込む際につかえるという症状が起こってきます。これはある程度癌が進⾏した段階で⾃覚されることが多く、放っておくと⾷事が満⾜に摂れなくなり、体重減少が起こります。⾷べ物がつかえる症状がある場合には、なるべく早いうちに医療機関を受診することが必要です。

5-4 ⾷道がんの初期症状その④ 声がかすれる

声がかすれるといった症状は⾵邪をひいたときにも起こりますが、⾷道がんの症状の可能性もあります。
これは⾷道のすぐ隣を⾛る「反回神経」という声帯を司る神経が、⼤きくなった癌によって圧迫されることによって起こります。
声がかすれるという症状から⽿⿐科を受診され、咽頭や喉頭に異常がないので経過観察となり、⾷道がんが⾒逃されるケースもあるため注意が必要です。

5-5 ⾷道がんの初期症状その⑤ 胸・背中の痛み

⾷道がんが⼤きくなってくると癌がまわりの臓器に浸潤し、胸や背中の痛みとして現れることがあります。
背中や腰の痛みは筋⾁の痛みと思われがちですが、実は内臓からくることもあります。体勢を変えて痛みが和らいだり、または強くなったりする場合は筋⾁からくる痛みの場合が多く、体勢を変えても何をしても変わらない痛みの場合は内臓からくることが多いとされています。
胸や背中の痛みは⾷道の症状としても現れるということが分かっていると、消化器内科を受診するという選択もできますので、参考になさってください。

6 まとめ

⾷道がんの症状は上記のように様々です。症状が様々であるがゆえに、その症状の原因が⾷道とは気づかずに発⾒が遅れてしまうケースも多くあります。
今回の記事を参考にしていただいて、健康診断や⼈間ドックを定期的に受けることはもちろんですが、気になる症状があった場合には消化器内科を受診して、胃カメラ検査を積極的に受けるようにしましょう。
当院は鎮静剤を使⽤した苦痛の少ない胃カメラ検査を受けていただくことが可能です。
どんなことでもお気軽にご相談ください。

この記事を執筆した人
伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

日本泌尿器科学会認定・泌尿器科専門医、消化器内視鏡学会所属
名古屋大学出身
年間30000人以上の外来診察を行なう。
YouTubeでわかりやすい病気の解説も行なっている。
再生医療のクリニックも運営

 

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