熱中症と新型コロナウイルス感染について
皆様、こんにちは。大宮エヴァグリーンクリニックの伊勢呂です。
2020年の7月になりました。ようやく大宮の人通りも戻ってきましたが、東京圏内を中心にクラスターが発生し感染者数が伸びており、夏になっても新型コロナウイルスは油断は出来ないと言う状況ですよね。私個人の意見ですが、感染者数はPCR検査が増えてきているため致し方ないのかなと思います。死者数、重症者の数、医療現場でベッドが足りているか、それにフォーカスを当てないといけないのではないと思います。死者数は増えておらず、ベッドも足りてないと言う状況で悪戯に国民の不安を煽って良いものなのか疑問に感じております。
さて、最近の産業医活動の中、企業さんから新型コロナウイルス感染と熱中症の症状の違いやマスクの必要性の有無などについての質問をいただくことが多くなりました。これはきっと皆様の疑問でもあると思いますので、本日はこの熱中症と新型コロナウイルス感染について最新の知見を取り入れて書きたいと思います。
当院でPCR検査を行っております
基本的に無症状の方が対象です
自費診療になります→詳しくはこちら
◆目次◆
1 熱中症
1.1 熱中症とは
1.2 熱中症のメカニズム
1.2.1 体温調整機能が狂うメカニズム
1.2.2 水分や塩分のバランスが狂うメカニズム
1.3 一般的な熱中症の対策
1.3.1 水分補給
1.3.2適切な室温管理
1.3.3普段からの体力作り
2 新型コロナウイルスと熱中症
2.1 新型コロナウイルス感染と熱中症の症状
2.1.1新型コロナウイルス感染と熱中症に共通する症状
2.1.2新型コロナウイルス感染と熱中症の症状が異なる点
2.2 新型コロナウイルス感染と熱中症の検査所見の違い
2.2.1 胸部レントゲン
2.2.2 採血検査データ
2.2.2.1白血球
2.2.2.2CRP(C関連蛋白)
2.2.2.3血小板
2.2.2.4NaやClなどの電解質
2.3 新型コロナウイルス感染と熱中症を見分けるために
3 2020年の夏を乗り切るための対策
3.1 マスクについて
3.2 日々心がけること
3.2.1 換気と室温管理について
3.2.2 マスクとソーシャルディスタンス
3.2.3 体力作りについて
3.2.4 食生活・生活習慣について
3.2.5 水分補給について
3.3 熱中症?新型コロナウイルス感染?と疑ったら
熱中症
熱中症とは
外気温が高くなることで身体の中の体温を調整する機能が狂います。また外気温が高くなることで、汗をかいたり水分摂取不足から体内の水分や塩分のバランスが崩れ、痙攣やめまいや頭痛や意識障害が起きます。熱中症とはこれらの症状の総称です。つまり暑くなることで身体に起きる変化の全ての症状を熱中症と呼ぶのです。
もちろん暑くなることに加えて、激しい運動や体調不良などは熱中症にかかりやすくなる要因です。
熱中症のメカニズム
体温調整機能が狂うメカニズム
外気温が上昇すると体温も上昇するわけではありません。人間の身体は体温を調整する機能がついています。汗により熱を放散させたり、皮膚の血管を拡張させて熱を外に逃がします。
ですが、水分不足になると汗が出ず、全身を巡る血液量も不足するため体温を下げることが出来なくなります。
そうして体温調整が出来なくなり体温が上昇していくのです。
なので夏場に体温上昇している方は熱中症を疑います。
水分や塩分のバランスが狂うメカニズム
水分や塩分のバランスが狂うと、頭痛や痙攣やめまい、意識障害などの症状が出てきます。汗をかくことで水分と同時に塩分を失います。また、気温が高いと汗は出ていなくても気づかないうちに水分は大量に失われているのです。そうすると、血液中のナトリウムNaやクロールCl(つまり塩)の濃度が低下します。NaやClの濃度が低下すると、神経や筋肉が正常に働くことができなくなります。そうすることで頭痛、めまい、痙攣、意識障害などの症状が出るのです。
こちらの場合は発熱しない場合もあり、熱以外の症状に注意をする必要があります。
一般的な熱中症の対策
水分補給
やはりこまめな水分補給は大切です。塩分を含む水分を補給しましょう。熱中症対策として販売されているドリンクが適切かと思います。
スポーツドリンクなどは飲みすぎると糖尿病などの持病を悪化させる原因になるため注意が必要です。
適切な室温管理
熱中症で搬送される4割の方が室内からということです。室内での熱中症対策も重要になってきます。もちろん外出しないことも大切ですが、室内にいるときもエアコンの管理が大切です。ひと昔前までは寝ている間のエアコンは良くないとされていましたが、今では寝ている間のエアコンは熱中症予防に大切だと言われています。
環境省は28℃で管理することを推奨しています。エアコンの室温を28℃にしても室温が28℃であるとは限りません。室温計で管理しエアコンの強度を調整することも必要です。また室温を下げすぎることで外気温との差が大きくなり体温を調節する自律神経に負担がかかります。室温の下げすぎに注意しましょう。
普段からの体力作り
熱中症で搬送される方の半分以上が65歳以上とされています。
ご高齢になると体力が弱り、環境の変化に適応するのが困難になるからだと言われています。普段からウォーキングなどで体力作りをすると良いでしょう。暑い時期は早朝や夕方以降の気温が下がった時に運動することをお勧めします。
新型コロナウイルスと熱中症
新型コロナウイルス感染と熱中症の症状
新型コロナウイルス感染と熱中症に共通する症状
発熱は共通します。熱中症では40℃近くまで上昇することもありますが、37℃前後のときもあるので発熱の上昇程度のみで判断するのは難しいでしょう。
頭痛も双方に共通する症状です。
疲労感、倦怠感も熱中症、新型コロナウイルス感染共にみられる症状です。
意識障害も双方に共通する点ではありますが、一般的に新型コロナウイルスは感染が進行して全身にウイルスが回ることで意識障害になります。
今朝まで元気だった方が意識障害になり新型コロナウイルスを疑うことはないでしょう。炎天下に急に意識障害が起きた場合は熱中症を疑います。
新型コロナウイルス感染と熱中症の症状が異なる点
みなさんご存知のように味覚障害、嗅覚障害、呼吸器症状(息苦しさ、咳)などは新型コロナウイルス感染に特徴的な症状です。これらの症状があれば新型コロナウイルス感染を疑います。
痙攣やめまいなどは熱中症では見られますが、新型コロナウイルス感染には特徴的ではありません。
新型コロナウイルス感染と熱中症の検査所見の違い
胸部レントゲン
新型コロナウイルス感染では肺炎が見られることがあり、レントゲンでそれを検出することが可能です。熱中症では基本的にレントゲンで異常を認めません。ですがレントゲン写真では判定可能な肺炎は進行した肺炎であり、小さな初期の肺炎だとCT検査が必要となります。
採血検査データ
白血球
白血球は身体を守る免疫機構です。
新型コロナウイルスでは90%が正常から低下すると言われています。
一般的にウイルス感染では白血球は上昇しません。細菌感染だと白血球は上昇します。(ウイルスと細菌の違いはここで書くと長くなるのでまた別の機会に。新型コロナウイルスはもちろんウイルスです。)
熱中症では白血球は上昇していることが多いと言われています。
CRP(C関連蛋白)
CRPは身体の炎症度合いを測定する値です。
新型コロナウイルス感染では軽度上昇すると言われています。
重度な熱中症だと上昇するときもあります。
血小板
新型コロナウイルスでも熱中症でも共通して血小板数は低下することが多いです。
NaやClなどの電解質
新型コロナウイルスでは電解質は特徴的な動きを見せません。
熱中症では電解質バランスが崩れていることが多く、その際は点滴などで電解質を補っていくことが大切です。
新型コロナウイルス感染と熱中症を見分けるために
この症状があったら新型コロナウイルス!!、この検査所見があったから熱中症!!、と判定するのは危険であり非現実的です。
全然外出していなかった方が炎天下に外出して急に気分が悪くなったのならば熱中症を考えますし、最近倦怠感が続いている方が息苦しさを伴う発熱が出てきた場合は新型コロナウイルス感染を疑います。
新型コロナウイルス感染や熱中症に関わらず一般的にな診療の流れは、症状の詳細と症状が起きるまでのエピソードを問診し、総合的に考えた上で何かしらの病気を疑い、それを確信に変えるために検査予定を立てていきます。そして検査で病気を断定できたらその病気に対する適切な治療を行います。
2020年の夏を乗り切るための対策
マスクについて
マスクは新型コロナウイルス感染対策には有用です。ですが常時つけていなければいけないわけではありません。マスクを着用していることで口周りの温度が3−5℃上昇すると言われており、熱中症の原因にもなります。(マスクを非着用していると吸う息が外気温の20℃台なのですが、マスクを着用していると体温に近い36℃の空気を取り入れることになるからだと言われてます)
人との距離を取って密でない状態であればマスクの着用は必須ではありません。これは熱中症予防対策に非常に重要です。
日々心がけること
換気と室温管理について
まず室温管理については熱中症対策と同様に28℃を保つようにしましょう。室内にいるときは常にエアコンをつけていても良いと思います。冷やし過ぎに注意ですね。
また新型コロナウイルス対策には換気も非常に重要です。
定期的に最低2つのドアを開けて空気の流れを作り換気しましょう。
30分ごとに1回の換気は最低すると良いでしょう。
マスクとソーシャルディスタンス
先述の通りマスクは必須ではありません。密にならない場所ではマスクを外すことが薦められてます。密閉された空間や密集された場所ではマスクの着用を心がけましょう。
体力作りについて
新型コロナウイルス対策にも熱中症対策にも日頃からの体力作りは非常に重要です。
最近の研究では、ややきついと感じる程度の運動を1日に30分行うことが体力作りに良いとされてます。
かと言って、日中日が照っている時に外で運動するして熱中症になるのは本末転倒かと思われます。
早朝や夕方の涼しい時間帯にウォーキングやランニングを行うと良いでしょう。
食生活・生活習慣について
食生活は特に言及はされていませんが、やはり生活習慣病にならないような食生活が良いでしょう。生活習慣病は新型コロナウイルスの重症化の要因となります。
お勧めは和食です。食の欧米化に伴い生活習慣病が増加してきています。
健康長寿に良いとされる食生活は、和食、肉より魚、玄米、腹8分目まで食べる、とされてます。
私もこの食生活を実践するようにして体調が良くなったように感じます。
また十分な睡眠を取ることも大切です。
水分補給について
水分補給は基本的には熱中症の対策に従っていただいたら良いと思います。脱水傾向にあるときは免疫力も低下しますので新型コロナウイルス感染も起こりやすいです。
こまめな水分補給と塩分補給を行いましょう。
熱中症?新型コロナウイルス感染?と疑ったら
倦怠感や頭痛、発熱などの症状を自覚した場合、自分で判断するのは危険です。近くのかかりつけのお医者さんに相談しましょう。
新型コロナウイルスは軽症のことがほとんどですが、熱中症であった場合はすぐに点滴などで水分を体内に入れないと命に関わる場合もあります。
ご自身で判断せずに受診をしましょう。
またご高齢のご家族が近くにいる場合は何かあったら常に連絡を取れる体制を作っておきましょう。熱中症で家で倒れていたから連絡が取れず気付かなかったということにもなりかねません。
テクノロジーが発達した現代社会です。文明の力を活かしてしっかりと連絡を取り合い、新型コロナウイルスと熱中症を乗り切りましょう。
現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。
現在、無症状の方に対しての新型コロナウイルスの自費のPCR検査(渡航前や出社前の方に対して)と抗体検査を行っております。
またオンライン診療も行っております。
全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記のリンクか下部のバナーよりご相談下さい。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
消化器科(胃カメラ)・泌尿器科・内科・人間ドック
大宮エヴァグリーンクリニック 院長 伊勢呂哲也