新型コロナウイルス感染後の後遺症について
皆さんこんにちは。7月も中旬に入り新型コロナウィルスの感染者数がまた急激に増加して参りました。都内では日々最高記録が更新されている状態です。マスコミが連日報道し、皆様も今後どうなることかと心配されていることと思います。ですが私は重症者の数にこそ注目するべきだと考えてます。感染者の数が増えることで煽るのではなく、重症者数、死亡者数、医療現場の逼迫具合などを総合的に考えると全て自粛方向にもっていくのはいかがなものなのかなと私は考えます。ただこれから重症者、死亡者数が急増することも考えられます。その時は思い切った自粛が必要になると思います。日々の報道やニュース、記事に注意し、本質を見抜いて行動していきましょう。
個人的に思うのは、4月のピーク時よりも感染者数が増えたのにも関わらず外出する人の量が減っていないなと思います。ほぼ電車もピークの混み具合です。人々の新型コロナウイルス感染に対しての意識も徐々に変化が出ているのかもしれません。
さて、本日は患者様からよく質問をされていた新型コロナウイルス感染後の後遺症のお話です。
米国医師会雑誌JAMAにイタリアからの報告が載りました。まだ完全な論文という形ではありませんが、新型コロナウイルスに感染した143人をその後も追った報告です。それについて簡単にまとめてみましたので、是非ご一読頂ければと思います。
当院でPCR検査を行っております
基本的に無症状の方が対象です
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◆目次◆
1 新型コロナウイルス感染後の後遺症について
1.1 後遺症とは
1.2 一部の報道で言われていたこと
1.3 これからの情報をしっかり吟味し選択していかなくてはいけない
1.4 どうすれば新型コロナウイルスに関する正しい情報を得ることが出来るのか
2 米国医師会雑誌JAMAに掲載されたイタリアからの報告
2.1 イタリアでの新型コロナウイルス感染の特徴
2.2 イタリアで後遺症について調査された143人の性別、年齢
2.3 イタリアで後遺症について調査された143人の特徴、持病
2.3.1 接種していたワクチン
2.3.2 持病
2.4 イタリアで調査された143人の感染時の状態
2.5 治療後の症状について
2.5.1 発症してからどれくらいの日数の後に調査しているのか
2.5.2 どのような症状・後遺症が多いか
2.6 イタリアの143人の本人たちはどう感じているのか
2.7 イタリアの研究の考察
新型コロナウイルス感染後の後遺症について
後遺症とは
そもそも後遺症とは、怪我や病気の後で残った機能障害や神経障害のことです。後遺症と聞くと一生残るというイメージを持ちますが、定義上はそのようなことは明記されておりません。
一部の報道で言われていたこと
一部の報道にて、新型コロナウイルスに感染した若者の肺が不可逆的なダメージを受けた、とありました。不可逆的なダメージとは、つまり新型コロナウイルス感染が治っても元通りの肺にならないということです。これは感染が終わってどの段階でどのような検査で不可逆的なダメージが起きていると判断したのかは明らかになっておりません。私は肺が専門ではありませんが、外科系の医師としてたくさんのCTやXPを見てきました。重症になり死にかけるくらいの肺炎を患った後の肺であれば、不可逆的なダメージがあっても不思議ではないと思います。しかし当時の報道の仕方では、普通に新型コロナウイルス感染により体調悪くなった若者の肺が、不可逆的なダメージを受け後遺症を持つことになった、と受け取られる方が多かったと思います。そうすることで不必要に大きい不安が煽られてしまいますよね。後遺症という言葉には恐怖感も伴います。
これからの情報をしっかり吟味し選択していかなくてはいけない
やはり、正しい新型コロナウイルス感染に関する情報は容易にテレビから得られないと言った印象です。著名人が死亡したりするとテレビでは大大的に取り上げ、死亡者数が増えないことには触れない。また、この後遺症についても感染した全員に起こりうることだとして報道し国民の不安を煽ります。今後はしっかり新型コロナウイルスに関する正しい情報を選択し、報道に惑わされずに生活していきましょう。周りとの調和も大切ですが、不必要に報道に振り回されていては身がもたないですね。
どうすれば新型コロナウイルスに関する正しい情報を得ることが出来るのか
では、どのようにして正しい新型コロナウイルスに関する情報を得れば良いのでしょうか。
それは、国内国外の権威ある医学雑誌に投稿された論文からの情報を得ることです。権威ある医学雑誌には適当な情報は絶対に掲載されません。
多人数の経験から得た結論を載せます。
なので、ご自身でその論文を検索して読むことが1番かなと思います。
しかし医療関係者でない場合、アクセスすら難しいこともあります。当院のホームページは定期的に新しい医学情報を掲載しようと思っております。もちろん信頼出来る医学雑誌に載った情報です。
米国医師会雑誌JAMAに掲載されたイタリアからの報告
イタリアから新型コロナウイルスとその後の症状、後遺症について発表がありました。それについてまとめました。
イタリアでの新型コロナウイルス感染の特徴
現在イタリアでは7月17日現在、死者数34997人、感染者数24万3506人と死者数は日本の35倍、感染者数は日本の10倍にになってます。
人口はというと、6036万人なので日本の約半分ですね。つまり、人口当たりの死亡率は70倍、感染率は20倍になるのです。何故そのような差が生まれたかについては、他のページ(新型コロナウイルスとBCGの関係について、新型コロナウイルスの検査について)で考察しておりますのでそちらをご覧下さい。
つまり、イタリアは新型コロナウイルスでかなり深刻な被害を受けたことになります。なので新型コロナウイルスについての研究を必死にそして命がけで行っていることが容易に想像出来ます。
イタリアで後遺症について調査された143人の性別、年齢
平均年齢は56.5歳(19歳-84歳)で男性が63%でした。新型コロナウイルスに感染で重症化しやすい方は高齢な方に多いですが、この研究は感染後のことなので全ての年代に幅広くいます。では、男性に多い理由はどうしてでしょうか。一般に重症化しやすいのは男性の方です。この研究は重症化は関係なく感染した後の研究ということなので、単純に感染した方が男性の方が多いということです。シンプルに考えると、男性の方が危機感が薄く、外出する傾向にあったのかもしれません。日本でもその傾向はみられると思います。
イタリアで後遺症について調査された143人の特徴、持病
接種していたワクチン
持病
- 5%の方が慢性心臓病
- 3%の方が心房細動
- 3%の方が心不全
- 35%の方が高血圧
- 7%の方が糖尿病
- 3.5%の方が悪性腫瘍
日本の高血圧を持つ方の割合が40%程で、糖尿病は8%程です。このイタリアの研究では高血圧35%、糖尿病7%とほぼ変わりません。高血圧も糖尿病も重症化の要因ではありますが、これは先述の通り感染した方の持病です。重症化した人を集めてるわけではなく、これは感染した方のデータです。そう考えると、持病関係なく全ての人に等しく感染していると思われます。
イタリアで調査された143人の感染時の状態
143人は入院した方が対象なようです。
- 72.7%の方が肺炎と診断
- 12.6%の方がICU(集中治療室)に入院
- 53%の方が酸素投与
- 19.6%の方が人工呼吸器を使用
- 平均入院期間は13.5日でした。
やはり肺炎と診断された方が多く、中には人工呼吸器や集中治療室に入った方もいます。
治療後の症状について
発症してからどれくらいの日数の後に調査しているのか
平均が60.3日でした。この3月に流行り始めて6月末に出た発表なので妥当な期間かなとは思います。つまりこの研究での標準的な方は、発症してから数日以内に診断を受け入院し14日程で退院します。そしてその40日後くらいに症状・後遺症があるかないか判断をしている、ということです。
どのような症状・後遺症が多いか
- 18%の方が無症状、つまり新型コロナウイルス感染の影響なし
- 32%の方が1つか2つ症状がある
- 55%の方が3つ以上の症状がある
- 53.1%の方が疲労
- 43.4%の方が呼吸困難
- 27%の方が関節痛
- 21.7%の方が胸痛
を訴えてます。
発熱の症状がみられた方はいませんでした。
退院して40日以上経っても半分以上の方が疲労や呼吸困難などの症状を3つ以上も抱えていることになります。やはり肺に何らかのダメージを与えていることが想像されますね。
イタリアの143人の本人たちはどう感じているのか
44%の方がQOL(生活の質)が感染前に比べて悪化したと感じているようです。疲労や呼吸困難の症状がある方であれば生活の質が下がったと感じるのも当然のこととは思います。
イタリアの研究の考察
この研究は発症してから平均60日間を追ったものです。まだその時点で80%以上の方に疲労や呼吸困難などの症状・後遺症が残ってはいるものの、それが一生残るということではありません。ですので不可逆的なダメージが肺や身体に残るかどうかはこの研究からはもちろん言えないです。
ただ、私の経験上、泌尿器科や消化器科の入院患者様(急性腎盂腎炎、急性肺炎、急性前立腺炎、腸炎など)や手術(開腹手術、内視鏡手術など)をした患者様が退院した後に40日間も何かしらの症状を訴えていることはなかなか稀なことです。
ですので新型コロナウイルス感染をただの風邪だと考えるのは非常に危険なことだと思います。
今後感染後の症状、後遺症については新たな報告が出てくることと思います。新しい情報に目を向けていきましょう。
ここでも新しいレポートや研究が出次第アップしていきたいと思います。
現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。
またオンライン診療も行っております。
全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記のリンクか下部のバナーよりご相談下さい。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
消化器科(胃カメラ)・泌尿器科・内科・人間ドック
大宮エヴァグリーンクリニック 院長 伊勢呂哲也