新型コロナとBCGについて
当院で新型コロナウイルス抗体検査を行っています→詳しくはこちら
皆様、こんにちは。前回この新型コロナウイルスとBCGワクチンの記事を書いてから1ヶ月半程経ちました。世の中の新型コロナウイルスに対する姿勢や動きに変化が出ているため今回記事を一部書き直して更新することとしました。5月14日から当院でも新型コロナウイルスに対する抗体検査を始めております。詳しくはこちらのページをご覧下さい。
BCGワクチンと泌尿器科の診療は意外にも繋がりがあり、我々泌尿器科医にとってBCGは普段から使用する薬剤です。新型コロナウイルスの現状に対して泌尿器科専門医の立場から発信するべきなのかなと思いこの記事を書かせて頂かことにしました。
最近患者様からよく、新型コロナウイルスとBCGワクチンの関係についてどう思うか?や、当クリニックでワクチン摂取ができるのか?と聞かれます。(当クリニックでは残念ですがBCGワクチン接種は行っておりません)
なんのことだろうと思って先日ネットや文献を調べてみました。そうしたら現在BCGと新型コロナウイルスの関係についてネットではわりと騒ぎになっているようです。
なぜBCGと新型コロナの関係が騒がれるようになったか、その経緯をまとめます。
1 新型コロナウイルスによる日本人の致死率、感染率の圧倒的な低さ
イタリアやスペインは100万人に対して200人以上死亡しているのに対して日本人は100万人に対して0.7人です。(5月16日の時点では日本人の死亡者数700人弱に対して世界全体での新型コロナウイルスによる死者数は30万人を超えてます。日本の人口は世界全体の1/50程度に対して死者数は世界全体の1/400です。全く感染が広まっていない国もあるのに対して、日本はかなり感染が広まっております。それにも関わらず10倍近くの差が出ているのです。)
日本人の感染者数に対しての致死率は5月16日時点で1.4%ですが、皆さんご存知の通り症状あるけど検査してないという方は無数に存在しております。何故なら保健所や相談センターに電話すると、軽症なら家で過ごしてくださいと言われるからです。結局その方は感染者としてはカウントされません。なので1.4%という致死率はかなり高く見積もられています。5月16日時点では埼玉県では緊急事態宣言も出されておりますが。それでもなお日本人の危機感の薄さも皆さんご存知の通りだと思います。しかし実際にお亡くなりになられている方は諸外国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。2週間という長い潜伏期間の影響もあり、もしかしたらこれからお亡くなりになる方が異常に増加するのかもしれません。これからイタリアやスペインやアメリカのようになるのかもしれません。しかし、私はそのような経過をたどらないのではないかと思っています。何故ならそれらの国は日本と同時期に新型コロナウイルスが入ってきているのです。それにも関わらずこの死亡者数の差が出ているのには何か理由があるはずです。
2 仮説 BCGワクチンを接種しているから日本人はコロナに強いのではないか。
ここ数日、上記のようなことが言われております。BCGワクチン接種は国ごとによって判断が違います。スペインやイタリアやアメリカはBCGワクチンを義務化しておりません。日本では1949年よりBCGワクチンの接種を義務化してます。そしてスペインの隣国であるポルトガルは死亡者数が200人との報告であり、スペインの1/60程度です。ポルトガルはBCGを推奨している国です。
だからBCG接種したことが新型コロナウイルスに有効なのかと言うのはかなり短絡的で医学的ではないと思われます。私が有効なのではないかと納得出来たその理由を下記に述べます。
3 BCGワクチンとは
BCGは皆さんご存知のように結核予防に使われるワクチンです。ヒトに対する毒性のない牛から作られた結核菌を打つことで結核に対する抗体を体内に作るのです。つまり毒性の無い結核菌で免疫、白血球を刺激して本物の結核菌に対して対抗出来るような強靭な身体ににするんです。それを日本では1歳までに行ってます。しかし、それが、何故新型コロナウイルスと関係あると言われているのでしょうか。
4 膀胱癌の再発予防にもBCGが使われる
早期の膀胱癌の経尿道的な内視鏡手術の後に再発予防としてBCGワクチンを膀胱内に注入します。私自身、この意味が泌尿器科研修医時代には訳がわかりませんでした。何故結核予防のBCGが膀胱癌の再発に使われるのだろうと。
この答えはBCGによる免疫の賦活化・活性化でした。つまり、BCGワクチンによって膀胱内が毒性の無い結核菌にさらされる⇨膀胱内の免疫・白血球が刺激される⇨癌の再発予防につながる、ということです。癌と免疫がイマイチ繋がらないかもしれませんが、初期の癌細胞は白血球が食べて消してくれるのです。健常な方にも癌細胞は出来ます。ですが白血球が食べてしまっているため癌細胞が増えて腫瘍・固まりにならないのです。
もちろん膀胱癌に対してのBCG膀胱内注入療法は保険適応であり、再発予防に効果があるとしっかり結果が出ております。私が手術を現役でしていた頃も、BCGワクチン注入を選択した方とそうでないと方との再発率の差は明らかでした。
5 BCGワクチンが新型コロナウイルスに対しての抵抗力をくれたのではないか。
結核菌に対するワクチンで白血球・免疫が活性化され癌の再発予防に効果がある、という事実と、BCGワクチンの接種を義務化している国とそうでないと国で重症化率、致死率の圧倒的な違いが生まれていることから、上記のような仮説が生まれました。これはあくまで仮説です。ですが、膀胱癌治療をしてきた泌尿器科医の私からするとかなりしっくりくる仮説であり信じたい仮説です。
実際オーストラリアではBCGワクチンと新型コロナワクチンに対しての研究を開始しているようです。
この仮説をスタッフや患者様にお話すると、少し安心した、なんか元気がでた、確かにそうだよね〜、とおっしゃられます。ネガティブなことを考えがちな昨今、少しでもポジティブな方向に皆様の思考が向いたらなと思い、この記事を書いてみました。
この仮説は個人的な見解です。
BCGワクチンを大人に対して打つことを推奨しているわけではございません。基本的にBCGワクチンは生後1歳までに打つことを推奨されております。
この仮説があるから外出しても良いということには決してなりません。緊急事態宣言も出されております。今後も引き続き新型コロナウイルスに対する感染対策を行っていきましょう。当院も新型コロナウイルスに対しての徹底した感染予防対策を行なっております。
当院では大人も子供もBCGワクチン接種を行っておりません。
当院は消化器科専門医、泌尿器科専門医による診療を行なっているクリニックです。
現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。
またオンライン診療行っております。
全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記リンクか下部のバナーよりご相談下さい。
何卒よろしくお願い申し上げます。
消化器科(胃カメラ)・泌尿器科・内科・人間ドック
大宮エヴァグリーンクリニック 院長 伊勢呂哲也