メニュー

サル痘・サル痘ウィルスについて

[2022.06.10]

新型コロナウィルス感染が徐々に落ち着いてきてウィルスと共存する生活になってきています。海外では感染者数などの報道もなく、マスクを付けていない人も多くなりました。日本ではまだマスクの着用は見られますが、徐々にコロナ以前の状況に戻りつつあります。新たに海外から‘サル痘ウィルス’について報道が出始め、日本でも注目されています。サル痘ウィルスに関してまだわからない情報が多い中、外国人観光客の受け入れが再開されたことで不安を感じている人も多いと思います。そこで最新の論文の知見とともに、今現在報告されているサル痘ウィルスについてこちらでご紹介したいと思います。尚、当クリニックではサル痘ウィルス感染を疑う方の診察は一切しておりません。疑いがあると思われる方は皮膚科への受診をお願い致します。

◆目次◆

1 そもそもサル痘・サル痘ウィルスとは
 1.1 サル痘はいつ発生したのか
 1.2 何故今サル痘が話題になっているのか
 1.3 今世界中の感染状況は
2 サル痘はどのように感染するのか
3 サル痘に罹った時の症状と期間とは
4 サル痘の潜伏期間は
5 サル痘の致死率
6 サル痘を調べる検査
7 サル痘を治す薬はあるのか
8 サル痘に効くワクチンはあるのか
9 今後私たちが気をつけること

1 そもそもサル痘・サル痘ウィルスとは

サル痘はオルソボックウィルス属のサル痘ウィルスの感染症です。主にアフリカで生息するリスなどの齧歯類(げっしるい)をはじめ、サル、ウサギなどのウィルスを持っている動物との接触によって人に感染します。サル痘ウィルスに感染すると発熱や倦怠感を伴って手足に発疹が出るのが特徴です。サル痘ウィルスのタイプは新型コロナウィルスと同じでエンベロープという脂質などでできた膜に覆われています。新型コロナウィルスと同様にアルコールの除菌消毒が有効とされています。

1.1 サル痘はいつ発生したのか

サル痘は1970年にアフリカ大陸で発見されたウィルスです。中央アフリカから西アフリカで流行し、日本では感染症法上の4種感染症に指定されています。2017年からナイジェリアで患者数が増え、その後イギリスなどに感染が広がっていきました。

1.2 何故今サル痘が話題になっているのか

1970年に人への感染が確認されたサル痘ウィルスですが、これまではウィルスを持ったリスなど齧歯類の動物から感染していました。ところが最近になって人から人に感染することが判明し、欧米をはじめとして感染、感染疑いの報告が相次ぎ、徐々に広がって行くのではないか、パンデミックになってしまうのではないかと話題になっています。また、「サル痘」という言葉から動物のサルを連想してしまい、サルに関連した病気なのかと思ってしまいますが、サル痘というのはウィルスによる感染症のことです。新型コロナウィルスと同じようにパンデミックになるのではという懸念と、その名前のインパクトから話題になっているのだと思います。

1.3 今世界中の感染状況は

上述したように2017年にナイジェリアで感染者が増加し、その後ナイジェリアに渡航歴のある人の感染がイギリスで発見され、2022年5月以降にはヨーロッパ、アメリカ、カナダでサル痘の感染や感染疑いの例が相次いで報告されるようになりました。最初はナイジェリアへの渡航歴のある人に限られた感染だったのですが、次第に渡航歴がなくとも感染、感染疑いのある人が増えていきました。
2022年6月6日現在のWHOの報告によればイギリス、アメリカ、カナダ、スウェーデン、ポルトガル、スペイン、イタリア、ベルギーなど28カ国で確認されています。日本においてはまだ確認されていません。

2 サル痘はどのように感染するのか

主にアフリカ大陸に生息するリス、ウサギなどの齧歯類の動物やウィルスを保有している動物と接触することによって人に感染します。人から人への感染は接触感染、飛沫感染とされています。
空気感染も疑われてはいますが、今現在では確認された事例はありません。またイギリスでの報告によるとサル痘ウィルスは男性同士の性交渉による感染が多いとされています。

3 サル痘に罹った時の症状と期間とは

発熱、頭痛、倦怠感、発熱後に発疹が出てきます。発疹は顔や手足に多くでます。手のひら、足の裏にも出ます。また男性間の性行為によって感染した場合は性器にも発疹が見られます。出現した発疹は徐々に膨らんできて水疱、膿疱、になってかさぶたになります。この発疹の症状は新型コロナウィルス感染との大きな違いです。かさぶたがなくなった時に感染力もなくなり治るのですが、発熱してから2、3日後に発疹し、2〜4週間で発疹がなくなるので長期間にわたります。また、合併症として気管支炎や敗血症、脳炎、角膜炎などを起こす場合もあります。

4 サル痘の潜伏期間は

サル痘は発熱の症状が出るまでに通常6〜13日、長い人では20日ほどの潜伏期間があります。潜伏期間の後、発熱や頭痛、倦怠感などの症状が5日ほど続きます。発熱後3日くらいで発疹が出てきます。

5 サル痘の致死率

サル痘の致死率は1%〜10%程度とばらつきがありますが、それほど驚くほど高い致死率ではありません。

6 サル痘を調べる検査

サル痘は抗原検査や抗体検査ではなく、新型コロナウィルスと同様にPCR検査が有用です。水疱や膿疱、または唾液や鼻から組織をとって検査します。

7 サル痘を治す薬はあるのか

日本においては特効薬とされる薬はありません。欧州ではTecovirimatという治療薬が承認されているようです。この他、まだ承認には至っていないものの数種類の有効性のあるお薬が実験されている状況です。

8 サル痘に効くワクチンはあるのか

サル痘は天然痘のワクチンが約85%の予防効果があるとされています。天然痘は1980年にWHOより根絶宣言が出されています。日本国内でも1976年まで定期予防接種として行われていましたが、現在ではアフリカなどの天然痘の発生国で生活する人や特別な事情がある人にしか接種は行われておりません。もちろん当院でも天然痘ワクチンの接種は行っておりません。

9 今後私たちが気をつけること

サル痘ウィルスに感染しないためには第一に感染源となる動物や感染者との接触を避けることです。新型コロナウィルスのようにパンデミックにはならないだろうとは言われています。ただし毎日情報をキャッチしていたずらに警戒しすぎないよう、その時に合わせた生活をしていくのが良いと思います。またウィルスが入ってきても正しく感染予防をすることが大切です。落ち着いてきたとはいえまだ新型コロナウィルスもありますので、手洗い、アルコール消毒をしっかりとしていくことが同時にサル痘ウィルスの感染予防対策にもなります。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME