メニュー

新型コロナウイルスと医療崩壊について

[2021.01.18]

皆様こんにちは。都内での感染者数が1日2000人を超える日々が続き緊急事態宣言も出されて、日本中が混沌としています。政府の発表も二転三転し皆様も日々ストレスのたまる生活をされていると思います。

なぜ緊急事態宣言が出たかといいますと、一番は「医療崩壊」につながるからということです。感染者数が増えたから緊急事態宣言が発令されたというわけではなく医療崩壊につながるからというのが現実問題だと思います。医療崩壊とは新型コロナウイルス患者さんが増えることで、本来救命すべき他疾患の患者さんを救えなくなってしまうということですよね。今現在本当に医療崩壊は起こっているのか、もし起こっているのならどうして起こっているのか、そして今後どうしていけば良いのかということを大宮のクリニックという現場にいる私なりに述べたいと思います。

◆目次◆

1 医療崩壊は本当に起きているのか?
 1-1 最近の大きい病院での現状
 1-2 先日当院で起きた症例
2 何故医療崩壊が起きるのか
 2-1 ICUの病床と人工呼吸器が足りない
 2-2 冬という季節柄、感染症が蔓延しやすい
 2-3 発熱のある患者さんは受け入れにくい
 2-4 大病院は保守的になってしまう
3 今後の展望について
 3-1 暖かくなってくるまで自粛で感染者を抑えなくてはいけない
 3-2 感染者数ではなく、重症者を受け入れるベッドに余裕が出てから

医療崩壊は本当に起きているのか

最近の大病院での現状

私の大宮エヴァグリーンクリニックには私だけでなく他にも約10人ほどの医師が勤務しています。その医師の中には大きな病院など様々なところで働いている先生方が非常勤として勤務しにきてくれています。そこの先生方から聞いた情報、私の研修時代や大学時代の友人から聞いた情報、私が実際に現場で感じる情報を統合しますと、新型コロナ患者を受け入れられる大きな病院では1月16日現在、新型コロナ患者で蔓延していてこれ以上の新型コロナ患者を受け入れるのは不可能な状況となっています。そして発熱が少しでもあると新型コロナの疑いがあるために受け入れてもらえません。発熱の原因が明らかに新型コロナウイルスによるものじゃないとしてもです。

先日当院で起きた症例

つい先日大宮エヴァグリーンクリニックに消化器科の患者様で発熱・黄疸(顔や目が黄色く染まってしまう状態)を伴う急性胆管炎・総胆管結石の方がいらっしゃいました。この病気についての理解は難しいと思いますが、簡潔に言うと緊急的に大きな病院で処置をしなければいけない状況にありました。近隣の病院10軒ほどあたりましたが、全てICUが満床であるという理由で結局どこにも受け入れてもらえませんでした。発熱している理由が総胆管結石が閉塞していて胆管炎があるからと明らかであっても、新型コロナウイルス感染の可能性が否めないとなると受け入れてもらえないのです。非常に危険な状況ではあったのですが、翌日再度来院してもらってもう一度近隣の病院に受け入れの依頼をしました。ですがまたどこにも受け入れてもらえず、結局私の以前勤務していた千葉県柏市の病院にお願いしたところ受け入れてくださってそちらに転送という形になりました。これはほんの1例でして1週間のうちに3例似たようなことがありました。これはまさに医療崩壊と呼ばざるを得ない状況だと思います。

何故医療崩壊が起きるのか

ICUの病床と人工呼吸器が足りない

新型コロナウイルス患者さんを受け入れるためには人工呼吸器が必要になることが多いのでICUの病床で受け入れることになります。2020年の春から新型コロナ感染が起きているのだから、その時からICUの病床と人工呼吸器を増やしておけばよかったのではないかということなのですが、増えなかったのには理由があります。まずICUの病床や人工呼吸器を増やすためには高額な費用がかかります。また呼吸器を扱える医師も必要となります。もしそれらを増やした後に新型コロナウイルス感染が収束して使われなくなってしまったら、採算が取れず病院の経営が立ちいかなくなってしまう可能性があるのです。国が大幅な補助をしてくれているわけでもなく、コロナを受け入れることにより病院の評判も落ちてしまいます。そのようなリスクを負いながら積極的に新型コロナウイルスを受け入れる覚悟のある病院はなかなかないのです。このように病床が不足している現状があるため、日本は感染者数・重症患者数が世界的に見ても他国よりも少ないのに医療崩壊が起こってしまっているのです。

冬という季節柄、感染症が蔓延しやすい

そもそも1月の第3週は新型コロナウイルスが蔓延する以前より、私が勤務医として働いていた頃から病院が満床になりやすい時期でした。満床とは病院のベッドがいっぱいになり、新規の患者様が受け入れられないということです。どこの病院でも1年のうちにちょうど1月の第3週から4週というのは満床になりやすいのです。冬は肺炎などの病気が増加します。気温が下がるので臓器の血流が落ち、すべての臓器においてパフォーマンスが落ちるのです。なので私はこの時期の患者さんには身体を温めることをすすめています。また、空気が乾燥しているので喉の乾燥から感染症にもかかりやすくなりますし、ウィルスが死ににくいため感染症が蔓延しやすく肺炎の人が増える、泌尿器科をはじめどの科も感染症の患者さんが増えます。つまり冬はそもそもそういう時期なので満床になりやすいのです。そこに新型コロナウイルスが蔓延し、ICUを占拠してしまうことで他の人が入れなくなり、本当に必要な人に必要な治療ができないという医療崩壊が起こってしまいます。

発熱のある患者さんは受け入れにくい

前述のとおり新型コロナウイルス対応をしている病院は発熱のある患者さんを受け入れにくいと言いましたが、実際緊急の患者さんは発熱している場合が大半です。泌尿器だと急性腎盂腎炎、急性精巣上体炎など、消化器だと感染症の腸炎や胆嚢炎などで発熱します。緊急疾患の場合は感染や炎症を起こしていることが多く、大半の患者さんが発熱しています。新型コロナウイルスではないだろうと思って発熱のある患者さんを受け入れてしまうと、万が一その方が新型コロナウイルス感染だった場合にその患者さんを新型コロナの病棟に入れなくてはいけなくなるのです。でも新型コロナウイルスの病床が空いていないとなると他の病棟に新型コロナウイルス患者さんがいることになってしまいます。そうするとスタッフに感染するリスクが増え、そこから院内感染に繋がってしまう可能性があるので発熱のある患者さんは受け入れにくくなるのです。では、発熱があり緊急性を要する患者さんはどうすればいいのかということになります。今は非常に厳しい現実になっています。まさに医療崩壊と言えるでしょう。

大病院は保守的になってしまう。

上記のような理由から新型コロナウイルス感染の患者さんが一般病棟、他病棟に絶対混じってはいけないので、どうしても大病院は保守的になってしまいます。万が一新型コロナウイルスが一般病棟に混じって院内感染が起ころうものなら病棟・病院を閉鎖しなければいけません。それこそ本当の医療崩壊になってしまいます。決定的な医療崩壊に繋がらないために保守的になってしまうのです。決して診たくない、嫌がっているというのではなく、本当の危機を避けているためです。大宮の近隣の大病院が私の胆管炎の患者様を受け入れて頂けなかったのにもこのような理由があっだのだと思います。どこかで一定の線引きをして断ることをしないと本当に大変な院内感染に陥る可能性があるからなのです。

今後の展望について

暖かくなってくるまで自粛で感染者を抑えなくてはいけない

今の日本の状況においては今後もICUや人工呼吸器を増やす、新型コロナの病床を増やすということは期待できないと思われるため、とにかく重症者の患者を減らすことが重要です。新型コロナウイルス感染の重症者の数を減らすということは必然的に新型コロナウイルスの感染者を少なくしなければいけません。感染者数の増加に伴い自動的に重症者数の割合も増加しています。感染者数を減らすということは、やはり自粛が必要になります。寒い時期は1月2月3月とまだまだ続きます。ここで2月の初旬で緊急事態宣言を解除すると確実に感染者数はまた増加します。私としては2月の初旬で緊急事態宣言を解除するのは危険なのではないかと思っています。正直経済を回すことは大事だと思っていたのですが、自分の患者さんが目の前で10病院に断られるという現実を目の当たりにし、これは本格的に危険だなと思い始めました。医療崩壊は目の前ではなく真っ只中です。

感染者数ではなく、重症者を受け入れるベッドに余裕が出てから

先日西村経済再生担当大臣は、緊急事態宣言の解除の基準に関して「東京都の新規感染者数が1日あたり500人を下回ることが目安になる」と発言されていましたが、私はそうではなく、ICUなどを必要とする溜まりに溜まった重症患者たちが吐き出されベッドに余裕が出てから解除するべきだと思います。感染者数ではなく、重症者数の数が減少し病床に余裕が出てくる時期がふさわしいと思います。そのように考えると、緊急事態宣言の解除は3月の後半くらいがベストなのではないかと思っています。

今後も皆さんに役立つ医療の情報を提供していきます。引き続き一人一人が出来る自粛生活を頑張りましょう。

現在当院では徹底した新型コロナウイルス感染対策をしながら診療を継続しております。

またオンライン診療も行っております。
全国どこからでもオンライン診療は可能です。泌尿器科、消化器科、内科でお悩みの方は是非上記のリンクか下部のバナーよりご相談下さい。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

消化器科(胃カメラ)・泌尿器科・内科・人間ドック
大宮エヴァグリーンクリニック 院長 伊勢呂哲也

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME